研究実績の概要 |
理論と実証の両面から研究を着実に推進した。理論研究としては産業集積の崩壊と貿易自由化との関係を空間経済理論により明らかにした。通常の理論では貿易の自由化で一旦集積すると崩壊することがないことが知られている。しかし3か国モデルで賃金を内生化することにより、集積形成で賃金が上昇するため、集積は崩壊し市場規模の小さい国に企業が移転していくことが明らかにされた。Kato and Okubo(2018)としてJournal of International Economicsに掲載された。 実証研究としては、①以前から継続している阪神大震災の企業レベルの実証研究を行い、GISを用いて被災企業の被災度合を計測し、地震による建物被害と企業の生産性および企業の存続に関する分析をした。Cole, Elliott, Okubo and Strobl(2018)としてJournal of Economic Geographyに採択された。②負のショックと産業内貿易、貿易の安定性の関係を明らかにした。Hayakawa, Ito and Okubo(2017)としてまとめ、Journal of the Japanese and International Economiesに掲載された。③東日本大震災後の家計における原発の考え方を分析した。エネルギーミックスの変化を分析し、福島原発からの地理的な距離が有意に関連していることが分かった。家計が原発に近いほど原発への抵抗感が大きいことが分かった。成果はRehdanz, Schroder, Narita and Okubo(2017)としてEnergy Economicsに掲載された。 このような理論・実証研究と並行してデータの収集と整理も計画通り進めており、自然災害や日本の地域の生産や国際貿易に関する長期・歴史データ、製品別データを整理している。
|