研究課題/領域番号 |
16K03655
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (70365477)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中古住宅市場 / サーチ / マッチング / 不動産価格 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究課題の一つである中古住宅市場におけるマッチング関数の推計のための準備および予備的分析を行った。具体的には、先行研究のサーベイ、分析に必要なデータセットの収集・構築・整備作業、ならびにいくつかの基本的な分析を行った。データセットの構築・整備および基本的な分析作業に関しては、集計データを用いた分析と個票データを用いた分析のそれぞれについて、以下の内容に取り組んだ。 集計データを用いた分析に関しては、ウェブ上で公開されている不動産物件情報を取得するためのプログラミング作業を行い、データ構築を開始している。今後、この作業を継続して実施することで、地域別の流通物件数、市場滞留時間、成約価格などが利用可能となる。ただし、研究計画書にも記載の通り、成約取引件数については、精度の高い情報が入手できない可能性があるため、不動産登記に関する統計情報などの活用を引き続き検討することとした。 一方、個票データに基づく分析に関しては、研究目的での利用が認められた大規模な家計パネルデータである「日本家計パネル調査」(Japan Household Panel Survey, JHPS) の利用した。現時点で、データ整備およびクリーニング、変数の構築が完了し、予備的な分析作業を開始している。JHPSがカバーする世帯数は、直近調査において約7,000となっており、全国を対象とした分析については一定のサンプルサイズが確保されているといえるが、今後地域などを限定した分析を行うことを念頭に、よりサンプルサイズの大きい政府統計の個票利用を引き続き検討していくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点で予定していた先行研究のサーベイ、分析に必要なデータセットの収集・構築・整備作業、および予備的な分析に関しては、おおむね当初の計画通りに実施することができた。不動産登記に関する統計情報や政府統計の個票利用などは、今後の分析作業の進捗に伴って必要となることが予想されるため、継続的に利用を検討していくこととした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえ、当初の計画に沿ってさらなる分析の拡張・精緻化を推進していく予定である。具体的には、以下に挙げる3点の分析上の課題に取り組むこととする。 第1に、米国を中心とした住宅市場のサーチモデルの実証では捨象されてきた、新築住宅の選択という側面を明示的に考慮する。こうした試みは、新築住宅市場のシェアが大きい我が国の現状を分析する際には必要不可欠なものである。第2に、市場参加者の異質性および(買い手と売り手の)マッチ固有の質を考慮した分析に拡張する。第3に、前述の複数均衡問題を考慮したうえで、中古住宅市場における均衡を評価する必要がある。これらの課題は、いずれも(労働市場を中心とした)既存研究で指摘されているものであるが、必ずしも明確な解決策が提示されている問題というわけではないため、本研究課題の重要な学術的貢献となることが期待される。 上記の分析課題に対する成果が得られた段階で、分析結果に基づく政策分析を行う。具体的には、中古住宅市場活性化を目的とした各種政策の効果を定量的に把握・検証することが目的となる。同時に、分析の結果を受けて、国内外のセミナー・研究会・学会等で積極的な報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データセットの構築に関して、不動産物件データや不動産登記情報の購入・取得に予算を計上していたが、予備的な分析に当たってはウェブ上で公開されている不動産物件情報を用いて行うこととしたため、今年度の支出は見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の通り、成約取引件数については、精度の高い情報が入手できない可能性もあるため、不動産登記に関する統計情報などの活用を引き続き検討し、そのための資金とする。また、サブマーケットごとの市場特性に関しては、各種公的統計の小地域集計の結果などを活用し、物件の位置情報に基づいてGISソフトウェアを用いた接続を行う必要があるため、このために一部を利用する計画である。
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