研究実績の概要 |
我が国の中古住宅市場は、諸外国と比較して取引のボリュームが極めて小さいことが知られている。中古住宅市場の活性化は、我が国が直面する重要な政策課題であるが、どういった要因が市場の活性化を阻害しているのか、また、政策的な介入がどの程度のインパクトを持つのかといった点については、必ずしも実証的なエビデンスが得られているわけではない。 本研究課題は、(1) 我が国の中古住宅におけるマッチング効率性の計測、およびそれに基づく (2) 取引件数および価格水準への影響の評価、という2点を目的としている。(1)については、マッチング関数の推定を通じて、中古住宅市場の規模拡大がマッチング効率の改善につながるという仮説を検証する。(2)については、マッチング効率の改善が取引件数の増加と価格上昇をもたらすという仮説を検証する。そのうえで、これらの実証結果に基づいて、中古住宅市場を対象とした各種政策の定量的評価につなげることを最終的な目的とする。 上記の問題意識に基づき、昨年度は中古住宅における情報の非対称性が住宅満足度に与える影響を検証した。これは、補助事業期間の延長申請を行った際の計画に沿って、中古住宅市場における買い手の情報収集手段がその後の住宅満足度に与える影響を分析したものであり、研究成果は新倉・直井・瀬古 (2021) として公刊された。 また、研究期間全体を通しての研究活動としては、研究目的での利用が認められた大規模な家計パネルデータである「日本家計パネル調査」(Japan Household Panel Survey, JHPS) を利用し、地域別流通物件数などの市場特性が、住宅購入者のサーチ行動および購入する住宅価額におよぼす影響を検討した。
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