本年度も昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより海外出張による研究を行うことが出来ないために当初の研究計画を断念し、それに代え海外協力研究者との定期的研究会の開催による、研究遂行と成果の発表にむけた作業を重点的に行った。同時に、激変するアジア経済の動向を研究に加えるため、その動向を追った。 アジアでは、コロナ感染症パンデミックによる実質的なロックダウン状態が続き、加えてそれがトランプ大統領が2018年から始めた米中貿易戦争を一層激化させた。しかも、2021年1月に誕生したバイデン米大統領もトランプ政権の対中政策を基本的に継続したために、アジア太平洋に巡らされた国際的生産のネットワークの再編が進んだ。その影響は知識基盤経済に向けた前提条件に大きな変更を強いている。 そのため、現在進行中の前提条件における大きな変化を正確に捉えることを課題に据えてた研究を行った。内容的には、コロナ感染症危機と米中貿易戦争がアジア経済に与える影響についての研究を、昨年度に続けて精力的に行った。 研究成果では、(1)米中貿易戦争以降の国際環境の変化により、米中間を軸にグローバル・サプライチェーン(GSC)あるいはグローバル・バリューチェーン(GVC)の分断構造が強まっている、(2)新型コロナ感染症危機が社会と経済のデジタル化を強力に推し進めているが、社会的には貧富の格差が拡大し、知識基盤型経済の構築で新たな課題が生まれている。(3)アジア新興国は国によりそのレベルは大きく異なるが、こうした事態を受けて新たな知識基盤経済に向けた産業高度化政策を国レベル、業界レベルで推し進めている。それらの研究成果の一部は、研究論文として学会誌に投稿し発表した。
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