2年目の研究結果をまとめ、論文として発表した。関連する新しい研究も行うことができた。主な結果は以下の通りである。 (1)所有構造からみた日本のビジネスグループに関する分析をまとめた。日本のすべての企業・事業所をカバーするデータによって、ビジネスグループの全体像を把握することができた。2,3社からなるマイクログループの数が全体の8割強で10社以上のグループは約4%であった。雇用やイノベーションにおける役割は大グループほど大きい。独立企業に比べ、グループ企業は特許出願が多く、グループ内の技術知識のスピルオーバーによるとの考えが支持された。 (2)企業間取引関係ネットワークとオープンイノベーションへの参加の関係を分析した。ビックデータの活用と共有はオープンイノベーションの重要なポイントであり、ネットワークが大きいほど、経済的効果は大きい。サプライヤーが多いネットワークでオープンイノベーションに参加する確立が高い反面、カスタマーの多い場合は逆であった。直接取引のない第3社との共有には、2次的なネットワークも重要であることが分かった。 (3)企業の生産ネットワークが国際展開している中、中間財の国際調達が企業の生産性や輸出に与える効果を分析した。国際調達は企業の生産性にプラスの効果があり、国内外の生産ネットワークの効率化による。事業所・企業の輸出にプラスの効果が確認されるが、雇用へのマイナスの効果は認められなかった。 (4)1996年以降の日本の事業所レベルのダイナミクスを分析した。産業全体で単独事業所が複数事業所を持つ企業の支所に代替されていること、雇用や付加価値の面で、複数事業所企業の役割が高まっていること、単独事業所企業が買収されるケースは少なく、労働生産性への貢献も非常に少ないこと、事業所間の資源の再配分による労働生産性の伸びには支所の参入退出が最も重要であることが明らかになった。
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