研究課題/領域番号 |
16K03667
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大木 良子 法政大学, 経営学部, 准教授 (20612493)
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研究分担者 |
石原 章史 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (80643668)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二面性市場 / 排他的取引 / 競争政策 / プラットフォーム |
研究実績の概要 |
本研究は、多面的市場における垂直的な取引制限・垂直統合を理論的に検討し、競争政策の観点からの評価に指針を与えることを目標としている。本研究では、多面的市場における垂直的取引制限・垂直統合について、垂直的取引制限がプラットフォーム間競争に与える影響、プラットフォームの垂直的組織が競争に与える影響について経済理論的整備に注力する。その上で、プラットフォームの垂直的構造に注目した事例研究を行う。 この課題に対し、平成28年度の主な実績として、代表者と分担者の共著論文を執筆し、現在英文査読付雑誌に投稿中である。本論文では、複数のコンテンツを保有するコンテンツプロバイダーが、複占的なプラットフォームそれぞれに限定コンテンツを供給するメカニズムを明らかにした。そこでは、限定コンテンツの数によって、コンテンツプロバイダーは、プラットフォームへの交渉力をコントロールしていることが明らかになった。またこの論文について、米国、ヨーロッパ、京都での国際学会、名古屋での国内学会、また、東京、大阪、神戸での研究会、国際カンファレンスで報告を行った。一連の研究報告を通じて、本論文だけでなく本研究テーマ全体に対する有益なコメントを得た。また、この先の研究の基礎となる関心の近い専門家とのネットワークも構築することができた。 加えて、これまで継続的に取り組んできた研究テーマについて、複数の研究成果を挙げることができた。これらの成果のうち競争政策的な視点や、垂直的取引契約の視点、契約理論的な視点、及び判例の経済分析という手法については、本研究テーマに直接応用することが可能である。これらにより、一層の研究の進展が期待できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文執筆に加え、情報収集、及びネットワーキングについてはほぼ計画通りに行うことができている。まず、二面性市場における垂直的取引制限についての基本的な経済モデルをとりまとめ、現在英文査読付き雑誌に投稿中である。この論文については、ワーキングペーパーとしてオンラインで公開している。加えて、積極的に複数の研究会、国内学会、国際学会で報告し、当該テーマに関する専門家から広く意見を得ることができた。同時に、専門家とのネットワークを構築することができたため、これを平成29年度以降に活かすことができる。 さらに、この経済モデルを基礎として、新たにプラットフォームの垂直統合や、プラットフォーム間の互換性、また経済厚生の観点からの垂直的取引制限の望ましさについての分析に焦点を当てた新しい理論論文を構想することができた。すでに初期的な文献検索とモデル構築は終了し、大まかな方向性を固めており、29年度中には完成させられる目処が立っている。 また、初年度に整理した既存研究の概要と理論モデルのメカニズムの把握、また専門家とのネットワークを使うことで、29年度以降は、現実の事例・判例を経済学的視点からまとめたケーススタディの執筆を独自の視点から進めることが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度前半では、前年度に基本的な分析を行った経済モデルを拡張した新しい理論論文の執筆に注力する。年度内に英文論文として完成させディスカッションペーパーとして公表する。この論文への意見を得るため、国内外の研究会、学会へ参加する。また情報収集を継続するため、関連図書・資料を広く収集する。 平成29年度後半は、最終年度における研究成果の報告・公表に備え、上記英文論文に加え、日本語でのケーススタディやサーベイ論文の執筆に着手する。ここでは、プラットフォーム市場における国内外の判例を経済理論モデルを応用して分析する。また、この判例分析を理解するために重要になるプラットフォーム理論の概略と最先端の研究のサーベイを行う。上記の研究について、国内の独占禁止法の研究会において報告し、問題点を明らかにする。この作業にあたっては、競争政策担当者や競争法学者と連携して継続的な学際研究の基礎を作ることを目指す。 最終年度である平成30年度は、それまで2年間の理論研究と事例研究を統合し、プラットフォームが関連する垂直的取引についての望ましい競争政策に対する提言を盛り込んだ専門書の執筆を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、研究分担者による支出計画の変更が影響している。当初、研究初年度であるため洋書の専門書を多く購入する予定であったが、別の研究費によって一部の図書に関連する支出が賄われたことがもっとも大きな変更点である。また、米国への海外出張の旅費を予定より低く抑えることができた点も影響している。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度追加的に、国際学会、国内学会・研究会で研究成果を報告するための出張旅費にあてる予定である。
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