最終年度である2018年度においては、本プロジェクト2本目の論文であるAsymmetric Product Line and Multi-homingについて、国内、国際学会および研究会において積極的に報告し数多くの有益なコメントを得た。それらを論文に反映すること注力し、近日中に国際的な査読付雑誌への投稿を予定している。 本論文では、複数のプラットフォームが市場で競争している状況を考察し、消費者が複数プラットフォームに参加する(マルチホーミング)可能性を考慮にいれた際、上流企業が供給する財が、明示的な排他的契約等がなくても、1つのプラットフォームにだけ供給されることを導出した。さらに、このような独占的供給が、経済厚生を増加させる可能性も示した。マルチホーミングする消費者が存在する市場においては、財の独占的供給を規制し、複数のプラットフォームへの供給を強制すると、かえって経済厚生が損なわれる可能性があることが示唆される。 これまで独占供給は複数の国で規制対象となっていた(例えば有料放送プラットフォームにおける独占コンテンツ)しかし、デジタル化の進展にともなうコストの低下から、消費者のマルチホーミングが観察される中、本論文で考察したモデルは、今後の規制のあり方を考慮するための新たな視点を提供している。特に、シングルホーミングする消費者のみを仮定していた従来の研究とは、規制が市場に与える影響が大きく異なることに注意が必要であると言える。 加えて、前年度までに完成していた1本目の論文、Exclusive Content in Two-sided Marketsについては、査読付き英文雑誌から改定要求を受け、それに向けて改訂を行った。その一環として、理論モデルの応用としてゲーム産業についての詳細なケーススタディを行った。改訂後速やかに再投稿する予定である。
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