本研究の目的は、どのような企業の海外進出が企業の収益を高め、国の国際競争力に寄与するかを探求することである。海外進出のパターンとしては、直接投資、アウトソーシング、または、国内で生産を行う輸出の可能性がある。 本研究では、理論的な枠組みとして、Antras and Helpman[2004]のモデルを応用し、マネジメントや研究開発等を含む本社機能の生産におけるシェアの違いが、輸出(国内生産)、直接投資、アウトソーシング(部品輸入)の選択に与える影響について分析した。本社機能のシェアが高い企業は直接投資を選択する比重が高く、本社機能のシェアが低い企業では、生産性が高い企業は海外アウトソ-シングを選択し、生産性が低い企業では国内生産により輸出を行うことが明らかになった。 日本の製造業企業へのアンケート調査により、マイルズ・スノー戦略タイプによる本社機能のシェアの違いについて考察を行った。分析の結果、研究開発を重視する探索型企業は本社機能のシェアが大きく、他方、生産コスト削減による業務維持の投資を重視する防衛型企業は本社機能のシェアが小さい、と結論付けた。分析型企業は、探索型企業と防衛型企業の中間の性質を持つことも明らかになった。 企業の投資戦略に適合した海外進出パターンとして、探索型企業はより積極的に直接投資を行い、分析型企業、防衛型企業は生産性が高い場合はアウトソ-シング、生産性が低い場合は輸出を選択するという結論を得た。 今年度は、研究成果をEuropean Accounting Association Annual Congress、ならびに、The 6th International Conference of the JIAR、において報告した。
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