研究課題/領域番号 |
16K03669
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
二階堂 有子 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (20396899)
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研究分担者 |
田中 健太 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (30633474)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中小企業 / 女性起業家 / 企業成長 / インド / 経済実験 / 中小企業政策 / 女性のエンパワメント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は(1)インドの小企業が小さいままなのはなぜか(2)経営者のジェンダーや社会的ネットワークがパフォーマンスにいかに影響を与えているかについて、企業レベルデータを用いた分析と、インド南部のフィールド調査を通じて明らかにすることである。
平成29年度の研究実績については、下記の通りである。 まず、中小零細企業省が2008年度に実施した「第四回全インド中小零細企業センサス」の個票データを利用し、企業や経営者の属性のほか、政府の支援政策が小規模企業の成長に与えている影響を分析した。特にインドでは、雇用創出や地域分散を目的に、小規模企業に対して1950年代から 税制上の優遇や一定品目の製造を小規模企業に排他的に留保する留保品目制度など様々な支援政策が提供されてきた。ただし、こうした政策が長年に渡って継続されていることにより、小規模企業の成長意欲を妨げているといわれている。つまり、企業規模が小規模企業の定義を超えて拡大すると、支援政策を享受できなくなるため、小規模に留まる企業があるという。本研究の実証分析の結果、先行研究と同様に、企業規模・年齢と企業成長は負の関係にあること、技術導入に積極的な企業の成長率が高いこと、農村部に立地する企業や単独所有の企業の成長率が低いことが明らかになった。その一方で、多くの先行研究とは異なり、インドでは女性の経営する企業が男性の経営する企業よりも成長が速いこと、政府の支援政策のうち、留保品目制度が皮肉にも企業成長に負の影響を与えていることが分かった。 次に、平成30年度にフィールド調査(本調査)を実施するため、平成29年度8月に、バンガロールとマイソールでパイロット調査を行った。対象は、潜在的な起業家としての大学生・大学院生男女約200名で、彼らの社会経済的背景について質問票調査を実施したほか、競争心や各種選好を測るために経済実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに企業の個票データを用いた分析については、上記で述べたように、雑誌での公表や国際会議での発表に至っており、計画通りに進行している。他方、研究計画との比較で、実施が遅れているのは、フィールド調査である。その理由は下記の要因のためである。
まず、平成28年11月にインド政府が廃貨措置(流通している現金の約86%を占めていた旧500・1000ルピー札の使用禁止)を突如実施した。次に、平成29年7月にこれまで複数の国税と州税が混在していた間接税が改められ、全国統一物品サービス税(GST)が導入された。これらの政策変更により、現地経済が混乱に陥ったため、パイロット調査と本調査の実施をそれぞれ一年ずつ繰り下げている。
小規模企業は、原材料や賃金の支払いに現金を利用することが多いため、廃貨措置により操業休止を余儀なくされたた企業も多かった。また、GST税の導入により、企業はこの税制に対応するために在庫調整やシステム変更など準備が必要になったほか、これまで間接税を免れていた一部の小規模企業も課税対象になったため、混乱がみられた。そのため、調査には適切な時期ではないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
企業の個票データを用いた分析については、学術雑誌での公表や国際会議での発表を通じて計画通りに進行している。他方、前述のように南インドでの本調査の実施が遅れているので、インドの研究協力者とさらに連携を深めながら対応していきたい。
ただし、平成30年5月に調査予定地のマイソールを含むカルナータカ州で州選挙があるため、本調査を予定している平成30年5から8月のベースライン調査(補助学生を動員して対象調査エリアの全数企業調査のあと、ランダムに企業をセレクションし、さらに詳細な質問票調査を実施)とその後に経済実験の実施に影響を与える可能性がある。 これら調査の実施には、多大な費用もかかることから、ベストなタイミングで調査を実施し、有効な調査となるように、状況をみながら適切に判断をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているのは、下記の理由により、フィールド調査の実施を延期したからである。 まず、平成28年11月にインド政府が廃貨措置を突如実施した。次に、平成29年7月にこれまで複数の国税と州税が混在していた間接税が改められ、全国統一物品サービス税(GST)が導入された。これらの政策変更により、現地経済が混乱に陥ったため、パイロット調査と本調査の実施をそれぞれ一年ずつ繰り下げたためである。
H29年度にパイロット調査を実施したが、残る未使用額はH30年度に実施する本調査の費用とする計画である。
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