2018年度の研究は、トピック・モデルを用いた金融政策当局の意思決定の分析を中心に進めた。具体的には、白川総裁と黒田総裁の定例記者会見70回分について、3つのトピックの存在を前提として、LDAを用いた分析を行った。得られた結論は、第1に「政策の目標」、「政策の手段」、「裁量」と解釈される3つのトピックが抽出された。第2に白川総裁と黒田総裁のの交代時期に「裁量」のトピックが減少した。第3に黒田総裁の時期の2016年初頭に「政策の目標」のトピックの割合が低下し、「政策の手段」のトピックの割合が上昇するという変化があったことがわかった。これらの結論は、黒田総裁の新しい金融政策のスタンスが、2%のインフレ目標などの政策の目標を強調したものであったことと整合的であり、一方で、就任から2年以上たった2016年初頭においてその目標が達成されていなかったために政策の手段に関するトピックを必要としたという意味で、解釈可能な結果である。以上の結果は、トピック・モデルを用いた分析が金融政策の意思決定の一部を説明可能であることを示唆するものである。これらの結果は、“The Arts of Central Bank Communication: A Topic Analysis on Words of the Bank of Japan's Governors”というタイトルでRIETI Discussion Papers Seriesとして公表予定である。 2019年1月には、American Economic Associationの2019 Annual Meetingにおいて、“A Semantic Analysis of Monetary Shamanism: A case of the BOJ's Governor Haruhiko Kuroda”というタイトルで、ポスター報告をした。
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