研究課題/領域番号 |
16K03671
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内藤 巧 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80314350)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 非対称メリッツ・モデル |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度に開発した基本モデルを3国以上に拡張し,特恵貿易協定の効果を動学的に評価した.また,資本蓄積に代えて研究開発に基づく異質企業非対称2国内生成長モデルを構築し,基本モデルの充実を図った. 論文"Trade diversion is reversed in the long run"では,非対称3国メリッツ・モデルにおいて,特恵貿易協定が直感に反して域外国から域内国への輸出を増やす「逆貿易転換効果」の原因としての経済成長の役割を調べた.国1と国2の間の地域貿易協定は,古い均斉成長経路に比べて,短期的には国3の成長率と国1・2への輸出割合(輸出品目の収入割合)を減らすが,長期的にはそれらを増やす.これは,国1・2が短期的に国3より早く成長することが,前者(域内国)の市場参入費用を後者(域外国)より大きく増やし始めるので,後者の競争力を相対的に高めるためである.本論文は現在投稿に向けて準備中である. 論文"Growth and welfare effects of unilateral trade liberalization with heterogeneous firms and asymmetric countries"では,相対賃金と相対国内品目数が内生的に決められる,研究開発に基づく異質企業非対称2国内生成長モデルを定式化した.一方的貿易自由化さえ均斉成長率を高めることを示した.また,国が対称的な場合には成長促進的な貿易自由化は常に厚生改善的であるが,国が非対称的な場合には,相対品目数の変化に起因する非対称的な実質賃金効果のため,成長促進的な貿易自由化は高々1つの国の厚生改善を保証しないことを示した.本論文はJournal of International Economicsに掲載済である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に開発した基本モデルを3国以上に拡張し,特恵貿易協定の効果を動学的に評価する,という本年度の研究計画は達成されている. その上,資本蓄積あるいは研究開発に基づく2種類の異質企業非対称2国内生成長モデルを構築できており,既にそれぞれの論文をEconomics Letters, Journal of International Economicsに掲載できている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,基本モデルにおいてある国の最適関税を特徴付け,静学モデルにおける最適関税と比較する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:少ない残額を使い切る必要がなかったため.
使用計画:57,545円という少額なので,次年度の計画にほぼ沿って支出すれば問題ない.
|