研究課題/領域番号 |
16K03676
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
近藤 健児 中京大学, 経済学部, 教授 (70267897)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 偽装難民 / 国境検問 / 国内査察 / 不法就労 / シェンゲン協定 |
研究実績の概要 |
EUのような域内労働移動が自由化された共同体は地域的経済統合の1つの究極の姿であるが、そこでは域外との国境管理が重要な問題となる。2015年にヨーロッパへ大量の難民・偽装難民が押し寄せたことは記憶に新しいが、玄関口となる国々の対応は異なっていた。ギリシャのように経済事情の良くない国は、流入する移民・難民にとって通過国であるため国境管理が甘かった半面、移民・難民の少なくとも一部は国内に滞留すると考えられるイタリアなどでは比較的厳密な国境検問を行っていた。最終目的国であるドイツやスウェーデンは、国内査察によってしか不法入国・就労者を取り締まれない。この研究では、最終目的国の取りうる経済政策の有効性を理論分析した。 主な結論として、1)国境検問を行っている国にその強化を促す政策は、移民・難民の流れが国境管理の甘い国にシフトする結果をもたらすため、当初は実効性があったとしても、持続的に効力を保つことができない。2)国境管理の甘い国との間に国境検問を行うことは有効である、以上2つの重要な政策提言を得た。 この成果は"International Immigration via Two Different Types of Midstream Countries"として、Binh, Tawada and Okawa (eds.)『Recent Development in Normative Trade Theory and Welfare Economics』(Springer, 近刊)に収録され刊行されることが決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の研究協力者であるバーリ大学のNicola Coniglio准教授からの資料提供もあって、中間的な成果として論文"International Immigration via Two Different Types of Midstream Countries", Binh, Tawada and Okawa (eds.)『Recent Development in Normative Trade Theory and Welfare Economics』(Springer, 近刊)にまとめ上げることができたという点においては、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、1)最終目的国にとっての有効な不法入国者に対する規制は、玄関口にある中間国を含めた共同体を形成している国々全体の経済厚生の視点からは望ましいのか、2)これまで画一的に考えていた不法入国者にも、偽装難民のように難民審査を首尾よくクリアすればその後は安泰に就労できるタイプと、不法滞在者のように観光客として入国する際はノーチェックでも滞在して就労している間常に摘発されるリスクを抱えるタイプとに峻別される。さまざまな規制政策はこれら2つのタイプの不法入国者数を内生的に変化させ、それが政策の有効性にどう関わってくるのか、などを考慮した、より現実を反映して発展させたモデルによる理論分析を行うことが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の最終年である平成30年度に、海外の研究協力者であるバーリ大学・Nicola Coniglio准教授の下で集中的に研究の仕上げを行うことと、研究成果を報告するためにの学会出張を計画しており、平成29年度の予算を一部振り分ける必要があったため。
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