研究課題/領域番号 |
16K03681
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
林 明信 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (10454547)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 航空ネットワーク / 航空会社間の非対称性 / ハブ空港の混雑 / 相互乗入れ国際空港の料金政策 / 相互乗入れ国際空港の投資政策 |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究実績として,国際学術専門誌(査読付き)の公刊論文1点および,国際学会の発表論文3点が挙げられる。
1点目の公刊論文“Airport congestion and capacity when carriers are asymmetric”は航空会社間の非対称性(市場シェアの違い)に焦点を当て,空港の料金設定における最善策・次善策を議論している。また,社会厚生の観点から見て,最善・次善となる料金政策と滑走路の投資政策との関係を明示的に示している。この公刊論文は国際学会の発表論文1点目“International congested airports: pricing and capacity”をもとにして,数回の改訂を踏まえて,最終的に国際学術専門誌「International Journal of Industrial Organization」に投稿し,公刊されたものである。2点目の国際学会の発表論文 “International interlinked airports: pricing and capacity”は上記(単一空港のみを扱う)公刊論文を,両国を結ぶ複数空港まで拡張し,それぞれの国際空港の料金政策と滑走路の増設投資について,グローバル厚生およびローカル厚生の観点から分析している。3点目の国際学会の発表論文“Vertical Differentiation and Airline Alliances: The Effect of Antitrust Immunity”は,航空サービスの垂直的差別化という特徴に注目し,航空会社間の提携行動が独占禁止法適用除外の対象にすべきかどうかについて,議論している。
これらの論文4点は本研究の目的と一致しており,得られた研究成果のもとで,航空および空港産業に対する具体的な政策提言がされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では,既存大手航空会社の競争戦略とハブ空港の料金政策に焦点を当てており、航空会社間の非対称性(市場シェアの違い)について,分析の視野から捨象していた。しかし,研究計画が進むにつれて、航空会社の市場シェア(滑走路の利用頻度)の違いによって,空港にもたらす混雑の度合いが異なり,その違いに応じる差別料金の必要性を認識するようになり,研究対象を拡大して,発展させることができたためである。また,両国を結ぶ複数空港まで拡張し,それぞれの空港の料金政策と滑走路の増設投資について,グローバル厚生およびローカル厚生の観点から議論できた点も研究が当初の計画以上に進めている理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では,研究計画調書の計画Ⅲにしたがい,国際ハブ空港間の補完的・代替的関係に注目しながら,複数ハブ空港の料金政策および滑走路の投資政策について,分析していく。具体的な実施計画については以下のように立てる。[1]現状調査では,欧米やアジア太平洋地域を中心に,国際航空ネットワークの運航の現状とハブ空港間の協力的・競争的関係を調査し,また複数ハブ空港の料金体系についても,その実態を把握しておく。 [2]関連研究の収集・サーベイと再整理では,複数の国際ハブ空港を取り扱う論文をサーベイしながら,分析モデルの構築に活用する。[3]モデルの構築と分析では,上述の作業を踏まえて,モデルを構築し,定性・定量分析を行い,結果を得る。得られた結果について,解釈を与えると同時に実証研究の結果との関連性を明らかにする。それらを踏まえて,政策的な含意を引き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成30年度中に参加する予定の国際学会が近場(香港及び日本国内)の開催となったためである。
(使用計画)研究計画調書の計画Ⅲにしたがい,国際航空ネットワークの運航の現状とハブ空港間の協力的・競争的関係を調査し,その実態を把握しておく。それらのデータを入力・整理するために,作業補助者1名,6時間×10日程度の補助作業を行う予定である。また,論文を作成する際に,図表の作成,数式の入力,参考文献の整理・入力など,作業補助者1名,6時間×15日程度の補助作業を行う予定である。それらの人件費として支出する。また,研究成果を国内外の研究会・学会で発表する際の旅費・宿泊費に使用する。研究の最終段階において,成果の一部を国際学術専門誌に投稿する際に,英文の校正や論文の投稿に必要な経費として支出する計画である。
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