研究実績の概要 |
本研究の目的は、貨物流動と都市の階層性・多様性の関係を詳細な貨物流動データから明らかにし、その構造変化要因を空間経済学や経済地理学の枠組みで理論構築を行うことである。具体的には、詳細な荷主の貨物純流動調査である『全国貨物純流動調査(物流センサス)』が長年に渡って行われてきたわが国のデータを中心に、市町村・生活圏レベルで都市階層・構造が貨物流動の構造にどのような影響を与えたのか、また交通ネットワーク整備や物流施設整備が都市構造やその発展にどのような影響を与えたのか、詳細な空間統計分析を用いてその理論化を試みる。
本年度の研究成果は、以下の2つである。1)昨年度後半に行った計量経済学的分析結果を基に報告論文にまとめ、2018年5月末にインド・ゴアで開催された国際学会(The Regional Science Association International, World Congress)で研究報告を行い、関係する研究者らと意見交換を行った。2)上記で報告した論文を基に学術論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿を行った。査読結果等を参考に、実証計量分析の改良や論文の加筆修正を進めた(現在は再投稿中)。
本研究全体を通じて、例えば、品目別・業種別の発着貨物量とその輸送コスト、さらに都市階層・構造に関して、以下の4点が明らかとなった。1)域間輸送コストは輸送距離や貨物量に対して逓減的である、2)大都市から中・小都市への域間輸送コスト(いわゆる下り)は、上りの同輸送コストに比べて高い、3)(部分的ではあるが)大都市の域内輸送コストは中・小都市のそれに比べて高い、4)発地の経済規模が輸送コストに与える影響は、着地のそれに比べて有意で大きいなど、幾つかの仮説検証が達成された。
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