2021年度は本研究プロジェクトの最終年度となるが、本プロジェクトの本来の目的は、外因的な不確実性(extrinsic uncertainty)によって引き起こされる景気変動や金融危機を分析するための基本的な理論モデルを構築し、国際資本移動との関連の中で分析するものであった。その分析の過程で、様々な研究論文を完成させ国際ジャーナルに公刊してきたが、2021年度は2018年から引き続き行っている二つの論文を国際ジャーナルに投稿した。一つは、均衡で内生的景気循環が生じる一方で、金融制約が緩むにつれて景気変動の振幅が増幅されていくという結果を得たもので、もう一つは、金融市場の不完全性が原因で均衡において資産バブルが生じ、労働市場の不完全性により均衡において失業が生じるような動学的一般均衡モデルを構築して、バブルの発生が失業や社会的厚生にどのような影響を及ぼすかを分析した論文である。この論文では、構築した理論モデルに本来備わっている労働市場のマッチング関数に関連した外部性を不胎化するような政府政策を課したもとで資産バブルの影響を分析したとしても、資産バブルの発生は社会的厚生に正の影響をもたらすというものである。また、もう一つの研究として、外因的な不確実性(extrinsic uncertainty)によって引き起こされる景気変動は金融市場が国際化された場合に、増幅されるのかどうかの分析も開始した。この分析によれば、金融市場が国際金融市場に開放された場合、金融市場が発展すればするほど、期待が引き起こす景気変動が起きやすくなるということが分かった。本研究プロジェクトは最終年度ではあるが、この研究論文はほぼ完成しているので、プロジェクト終了後とはなるが、すぐに国際ジャーナルに投稿できるところまで来ている。
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