研究課題/領域番号 |
16K03687
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
春日 教測 甲南大学, 経済学部, 教授 (50363461)
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研究分担者 |
鳥居 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (40164066)
宍倉 学 長崎大学, 経済学部, 准教授 (40444872)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 産業融合 / 時間制約 / 代替・補完効果 / 離散選択モデル |
研究実績の概要 |
本課題では、産業融合が進展する動画配信市場におけるサービス間の代替性・補完性を横断的・定量的に検証することが、最終目的である二面市場における新たな規制課題を検討し競争政策への示唆を得るという最終目標に対して重要である。初年度の文献サーベイを基礎とし、以下では2つの実証分析を行った。 第一に、見逃し視聴サービスへの消費者選好分析から時間制約に対する需要を分析した。またこの調査が表明選考法に基づくものであったことから、実際の視聴行動に関するデータでも補完的な分析を行った。同時プロビットモデルを用いた分析では、特定の時間にテレビ視聴という便益を得るために時間を作るのは時間価値が高い人ほど難しく、その人ほどタイムシフト視聴を選択しているという証左を得ることができた。 第二に、サービス需要の代替性・補完性は一般に交差弾力性の正負によって定義されるが、その際に利用される価格データがメディア市場では存在しないことが多い。このような状況をふまえ、適切な価格データが利用可能ではない、ないしは存在しないときに、財の需要間の代替性・補完性を推計する方法を考案し提示した。実際のデータへの適用にあたっては、主として地上波テレビ番組視聴者の番組選択行動を用いており、一般に従来より指摘されてきた行動との整合的な指標となっているかを検証した。NHKにより提供される番組は、民放により提供される番組と代替的な番組を提供するが、民放によって提供される番組同志は互いに補完的な番組を提供するようだ、との暫定的な結論が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の文献サーベイ結果を踏まえ2本の暫定的な論文を提示できた。しかも1本目の論文については、分析の一部を書籍の1章として採録できており、その点では十分順調に進展していると言うことができると考える。 書籍の全体的なテーマはOTT(Over the top)事業者に関するものであり、本研究テーマで掲げたメディア市場の産業融合についても第二部で扱われている。近年、動画配信事業者の参入が目立つようになってきており、動画をタダで配信するサービスの競争政策への影響やFake News問題への対応等が、経済学的側面からも分析対象として注目を集めてきている状況に関しても記述した。特に「諸外国における垂直合併事例の動向把握と競争当局の判断・数量分析事例の整理・検討」にも密接に関連する内容である。 ただし海外での学会発表時には疑問や質問も含む多くのコメントを受けており、いずれも致命的なものではないが、改稿して英文雑誌に投稿するまでには一定程度時間がかかると考えられるため、早い時期の投稿を目指して鋭意取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
分析の一部は書籍の一章として収録できているが、最終的な目標は一定程度の定評がある海外の英文ジャーナルに投稿・採択されることであり、鋭意発表・修正を継続中である。 幸いなことに、研究者のうち2名が、研究期間中に時期をずらして海外滞在の機会を与えられた。滞在先での関連分野の研究者との交流も含め、現地での学会発表などで得た情報を有益に活用して、研究のとりまとめに尽力したい。 懸念事項として、可能ならばアンケート調査をもう一度行いたいことがある。必要性・緊急性を十分吟味したうえで、金銭的リソースをうまく配分して、可能ならば実施し、研究成果の充実に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述のとおり新しいアンケートを実施できないか検討中であり、次年度にまとめて使用する必要があることから繰り越すこととなった。最終年度でありなんとか実施の目途が立ったことから、利用できる予定である。 アンケート実施にあたっては、質問内容を十分精査した上で行う必要があるが、残りの研究実施期間である程度成果をまとめる必要もあるため、年度半ばの適切な時期に実施できるよう準備したいと考えている。
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