研究実績の概要 |
近年の日本において,政府の観光立国戦略の本格的推進に伴い,各地方自治体も外国人観光客の誘致を重要な地域振興策の一つとして重視している。このような背景の下で,三大都市圏を中心に訪日外国人客の規模が著しく増大しているが,多くの地方自治体では期待されたほどの効果はまだ現れていない。本研究は,国際観光行動の関連理論の発展に貢献するとともに,日本各地の効果的なインバウンド国際観光促進戦略の策定にも資することを目指して,世界最大の国際観光市場国に躍進している中国からの観光客の旅行行動(旅行先選択行動,交通経路選択行動, 宿泊先選択行動など)に着目し,その行動パターンの特徴と影響要因を詳細に分析する。 この研究の研究期間は三年間となっている。平成28年度では、中国や中国人客の主な旅行先国・国連世界観光機関の関連統計を整理し,近年の中国人観光客の出国動向と急増背景を考察したうえ,中国人観光客の旅行行動の一般特徴と影響要因を分析した。具体的な研究実績としては, ①中国(本土)のほか,日本(九州・関西・東京), 韓国, 香港など中国人客の重要旅行先を訪問し,協力研究機関や旅行社で研究交流,聞き取り調査を行った。②1980年代以降の中国人観光客数の推移と主要訪問先国別動向(日本の場合は都道府県別動向)に関する時系列データベースを整備した。③中国人客の旅行先選択行動に関する論文1本と中国経済に関する他の関連論文1本が掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
これからの2年間に,次の研究計画に基づいて,当研究を推進していきたい。 平成29年度では,アンケート調査データ(個票データ)と離散型選択モデルを用いて,訪日中国人客の旅行行動(旅行先選択行動,交通経路選択行動, 宿泊先選択行動など)に対する個人属性(年齢,性別,職業,学歴,収入など)や旅行先属性による影響を詳しく分析する。 平成30年度では,中国国内と一部の観光先国でのアンケート調査やデータマイニングに基づいて,東南アジア,欧州,北米,韓国などを訪問する中国人客と訪日中国人客の旅行行動の異同と影響要因を検証する。そして,3年間の調査研究結果に基づいて最終研究報告書をまとめる。
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