本研究では、産学連携が企業及び大学の研究生産性に与える影響を、論文データと特許データを用いて実証的に分析する。研究者の研究履歴や人的ネットワーク等を考慮し、産学連携による共同研究が企業及び大学の研究生産性に与える影響を、計量経済学の手法を用いて推計する。 2019年度には、それまでに得られた研究成果を活用し、最適な分析モデルや分析手法を確定させ、統計分析を行った。具体的には、世界規模で論文データを収録しているデータベースScopusと、特許データベースであるPATSTATやIIPパテントデータベースを、著者の所属する機関や出願人の機関の情報から整理した。それらのデータベースを機関名でマッチングし、企業と大学が共同で執筆した論文または共同で出願した特許、共同で発明した特許を可能な限り識別した。それらの論文や特許が、他の論文や特許と比較して質が高いか否かを、論文や特許の質を示すと考えられる被引用情報を用いて分析した。その結果、企業と大学が共同で執筆した論文はそうでない論文と比較して、著者の人数等をコントロールしても、被引用件数が多い傾向にあることがわかった。特許についても、企業と大学が共同で出願した特許や、共同で発明した特許は、そうでない特許と比較して、被引用件数が多い傾向にあることがわかった。また、企業パフォーマンスについて分析したところ、大学と共同で論文を執筆した企業は、他の企業のみと共同で論文を執筆した企業や、大学でなく公的研究機関とのみ共同で論文を執筆した企業と比較して、パフォーマンスが向上している傾向にあることがわかった。 得られた研究成果を学術的な形式に整理し、学会や海外大学で開催されたワークショップ等で発表を行った。なお、研究発表を予定していた国際学会が新型コロナウィルスの影響で2021年に延期となったため、本研究の成果を2021年にも発表する予定である。
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