研究実績の概要 |
本研究は、コミュニティにおいての見せびらかし消費などの他人の消費と比較して過剰な消費費行動へと駆り立てる消費の外部性を存在するとき、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の蓄積がそれを抑制して、より効率的な消費行動をもたらすかどうかを考察するための動学ゲームを構築した。各経済主体には、ソーシャル・キャピタルの形成のために時間を割かず、労働供給の増加による所得増によって、消費水準を高めるというフリーライダーのインセンティブがあるので、各経済主体間の時間を通じる相互依存関係を分析するために微分ゲームを用いて分析した。その結果、労働の不効用の度合い、将来の割引率やソーシャル・キャピタルの減価速度(住民の退出速度よって決まる)などのパラメーターの大きさによって、ソーシャル・キャピタルの形成が困難なコミュニティと、その形成が比較的容易なコミュニティの2つのコミュニティが存在することがわかった。特に、後者ではソーシャル・キャピタルが形成は起こらず、そこから抜け出すことができないソーシャル・キャピタルの形成に関する『貧困の罠』が生じることがわかった。 さらに、経済主体の将来の割引率が低い(将来を重視する)ほど、ソーシャル・キャピタルの減価速度が遅いほど,労働の不効用の度合いが大きいほど、あるいは、コミュティの人数が少ないほど、ソーシャル・キャピタルの蓄積が容易であることがわかった。また、ソーシャル・キャピタル形成ための政策として、コミュニティからの住民の退出を抑えて定住率を高めたり、公民館などの交流の場を提供して、交流することの便益を高めることがソーシャルキャピタルの蓄積を促進する上で重要であるという政策的インプリケーションを得た。また、行政サイドが行う政策として労働の不効用を直接高めることは難しいが、消費税の導入も同じ効果をもち、ソーシャル・キャピタル形成を促進することがわかった。
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