航空会社と空港の間の関係は、対立関係と協調関係が共存する複雑で多面的な構造であり、交通経済学、契約理論、ゲーム理論等の観点から興味深い。航空会社と空港の間の関係は、対立関係と協調関係が共存する複雑で多面的な構造であり、交通経済学、契約理論、ゲーム理論等の観点から興味深い。欧米でも、LCCが躍進する中、空港との間で収入リスクをカバーする契約が結ばれ、交通ミクロ経済学の視点から分析が開始されており、競争政策上の課題等についても議論がなされている(ECガイドライン2008)。 我が国でも、地方空港が航空会社と路線収入のリスクを分配する契約例が現れ(能登空港搭乗率保証契約(2003~)等)、政策上も、国交省が、羽田空港の発着枠の配分において、地方路線向け発着枠配分につき、両者のリスクシェア等の協調内容を加味する事態も生じている(2012~)。空港民営化の一形態であるコンセッションにおいても、民営化後の空港管理主体が、航空会社と旅客需要の変動リスクを共有する内容の着陸料を設定する慣行が生じてきている。 本研究は、空港と航空会社のリスク分配契約に関する先行研究を踏まえ、より一般的な状況へ分析の拡張を試るものである。 2018年度には、これまでの不完備契約の枠組みを用いたリスクシェアリング契約に関する研究に加え、リスクシェアリング契約の合意内容について、Nash Bargainingの枠踏み及びCournot-Nash均衡の2段階の枠組みを用いてモデルを設定して分析し、線形リスクシェアリング契約の最適な内容等についてモデル等を用いて分析し、結果について専門学術書として刊行した。
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