本研究は、地方行財政計画が直面する課題のひとつである安定的な地方財源の確保に資することを目的にして、地方税収入の安定性について実証的に分析することに取り組む研究である。このような研究課題を設定したことの問題意識は、地方税の課税ベースとなる個人の所得や企業の利潤、あるいは固定資産の価格などは、景気に伴って変化することが想定されるが、しかしながら、税制がその変化をうまく吸収するように設計されているならば、地方税収入を安定化させることができるのではないかという着想にある。そこで本研究は、この着想を仮説として設定し、これを実証的に検証することを通じて、税収の変化を安定化させるような地方税制度の設計のための条件等を明らかにすることに取り組むことを中心にして、地方財政の健全性や行財政改革のあり方に関連した調査研究を実施した。 これらの取組によって、本研究は、税収の多様性と安定性の間に一定の関係があること、また主として納税者の税負担の激変緩和であったり、税収の安定的な確保の観点による制度の仕掛けによって、地方税制は課税ベースの変化を直接に税収の変化として伝えるのではなく、税収の変化を抑制するこうかがあることなどの結果を得た。 このような本研究の分析は、他の表現で述べると、いわゆるビルトインスタビライザーの効果を検証することと等しいと言える。したがって、本研究は、地方税制におけるビルトインスタビライザーの効果を検証したものといえる。 その他、安定的な地方財源の確保に関連する調査研究として、地方税制の近年の動向や改革の意義等についても検証した。
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