研究実績の概要 |
平成30年度は、前年に引き続き、国債のデフォルトを導入したニューケインシジアン型のDSGEモデルにおける最適財政・金融政策についての研究を進めた。まず、家計の効用関数に基づく厚生損失関数を厳密な形で導出し、厚生損失関数に国債の利回りに関するギャップが現れることを示した。続いて、Okano and Inagaki (2018,Revison Requested by IJCB)、Okano and Hamano (2018, MD)で用いられたような国債の利回りギャップを含まないアドホックな厚生損失関数を最小化した場合と、厳密に導かれた国債の利回りギャップを含む厚生損失関数を最小化した場合でどのように最適な財政・金融政策が異なるかを分析した。そして、得られた最適な財政・金融政策を、Leeper (1991)などで示された非常にシンプルなルール(テイラールールとBohnルー ル)によって近似した。具体的には、グリッドサーチによって厚生損失関数を最小化するようなテイラールールとBohnルールの係数を求めた。FTPLの文脈では、この政策ルールの反応係数によって、金融政策と財政政策のレジーム(activeかpassiveか)が分かれることになるが、デフォルトリスクが存在する場合の財政・金融政策のレジームの特徴について明らかにしたことが本研究の貢献である。これらの分析結果を、国内の学会で1回、海外の学会で5回発表した。特に、平成30年10月にプラハで開催された26th Eurasia Business and Economics Society (EBES) ConferenceではBest Papar賞を受賞した。
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