本研究では、人的投資機会が少ない労働者を取り上げ、(1) 離職者訓練の効果に関する分析と(2) 人的資本投資機会の男女間格差に関する分析を行い、質の高い労働力を確保するための施策を検討した。 (1)離職者訓練の効果に関する分析に関しては、『就業構造基本調査』の個票データを利用した分析を行った。データクリーニングを行い分析データを作成し、就業状況、賃金、雇用形態等の基本的な成果指標を作成し、記述統計量を算出して傾向を把握するとともに、Propensity score matching 法を用いた推定を行ったところ、公共職業訓練には就職にはプラスの影響のある可能性が示されたが、賃金に関しては統計的に有意にプラスの影響がある可能性は低いことが分かった。この分析の一環として、自発的な職業訓練の効果についての分析を労働者個票データを用いて行った。その成果を論文に取りまとめ、国際学術雑誌 (Journal of the Japanese and International Economy) に投稿したところ、査読を受けたうえで採択された。 (2) 人的資本投資機会の男女間格差に関する分析に関しては、『能力開発基本調査』の個票を用いて分析をした。計量分析の結果、様々な属性をコントロールして も企業内訓練において男女間格差が大きいことが示された。同時に進めていた最低賃金の引上げが職業能力開発に影響を与える分析において、DDD法を用いた分析を行い、男性と女性で最低賃金引上げによって 職業能力開発が受ける影響が異なることを明らかにし、論文にとりまとめ、国際学術雑誌 (Labour Economics) に査読を受けたうえで掲載された。
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