研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,OECDの社会純支出データベースを利用して,実証分析を行った.これまでの数少ない研究では,公的純支出と私的純支出を別々の変数として 扱いながら,Gini係数などの分配不平等指数を線形回帰する手法がとられていたが両項の交差項を説明変数に含めると回帰の結果が大きく変化してしまうこと を発見したので,総純支出(公的純支出と私的純支出の和)および私的純支出と公的純支出の比,さらにこれら2つの交差項を主要な説明変数とした回帰式を用いて計測を行った.今年度は,昨年度の研究で得られた動学パネル分析による結果の頑健性をチェックすべく,純社会支出の規模を市場価格表示の国内総生産に対する比率から要素費用表示の国内総生産に対する比率で測るという変更を加えて,再検証を実施した.そして,ほぼ結果に変わりがないことを確認した.また,サンプルサイズが少ない点を考慮して,G.Bruno (2005, STATA J.)が提案しているBias corrected LSDV estimatorを試してみた.だが残念ながら,好ましい結果は得られなかった.完成させた草稿は,東北大学経済学部の現代経済学研究会,早稲田大学で開催されたWaseda-Australia Conference on Political Economyで報告した.また,2019年8月にグラスゴーで開催される国際財政学会での報告が許可された.公刊については,何度か国際学術誌に投稿したが未だ成功しておらず,現在は結果待ちの状態になっている.
|