夫と妻の就業時間、家事・育児時間、余暇時間の時間配分と子ども数との関係について、その規定要因を探り、規定要因と家族政策との関係を考察することを目的として研究を行った。今年度は、以下の4つの分析を行った。第一に、政府が繰り返し行っている大規模調査「社会生活基本調査」の匿名データを使用し、1990年代から2000年の初頭の期間、子育て期の日本の夫婦の生活時間のパターンとその変化について検証した。夫も妻も1日の平均余暇時間において大きな変化はない。共働きと専業主婦夫婦別に余暇時間をみると、共働きの妻で平均余暇時間が特に短い点もこの期間変化はない。夫の家庭内労働時間は乳幼児がいる場合に、長くなる傾向が見られた。夫の家庭内労働時間を長くする要因のひとつは夫の学歴の高さとの結果が得られた。第二に、子ども数を決定する重要な要因として、子どもをもつことの喜びやコストに関する夫婦の認識があると考えられる。これを分析するため、個人の意識に関する情報をもつ調査データを使った分析を行った。その結果、子どもをもつ喜びを高く認識しているほど、女性では出生確率が高いが、男性では認識と出生確率との間に統計的に有意な関係は見られなかった。女性のこの認識は、出生や3人以上の子どもの存在で低下し、子育ての負担感は女性でより大きいことが示唆された。第三に、日本の少子化の最も大きな要因は未婚化の進展であるが、その背景には若者の就労状況の不安定化があるのではないか、という仮説のもとに分析・調査を進め、図書を成果として出版した。また、研究分担者前田が実施した調査データを利用し、学生の就職活動の2013年から17年までの5年間の推移を論文としてまとめた。第四に、子どものコストとして大きな要因のひとつである、子ども関連の消費について、現状と変容について研究を行い、学会報告するとともに論文として公表した。
|