研究課題/領域番号 |
16K03718
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
塩津 ゆりか 愛知大学, 経済学部, 准教授 (60599182)
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研究分担者 |
下原 勝憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (10395105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域コミュニティ / 可視化 / 自発的供給 / 動機 |
研究実績の概要 |
本研究は、「住民自らが日常行動を通して地域コミュニティの課題を可視化すると、地域公共財の非受益住民であっても、地域公共財の自発的供給に協調行動をとる」といえるかを3つの課題に分けて検証する。2016年度は課題1および課題2に取り組んだ。これらの課題に取り組むため、まずはじめに同志社大学にて倫理審査を受け、承認を得ている。 課題(1)地域住民の日常行動から地域課題を可視化する関係性の表現機構 GPS搭載のスマートフォンから通信・位置情報を取得し、関係性指数(RI: Relationality Index)として定量化するアプリを開発した。実験用GPS搭載のスマートフォンにアプリを実装し、2016年12月に研究協力者向け説明会を実施した。現在、研究協力者からデータを収集中である。加えて、仮想データを用いてコミュニティ関係資産を可視化するプログラムの開発を行った。 課題(2)地域公共財の自発的供給に対する支払意思額決定動機の解明 2016年度上期に地域公共財の自発的供給のための支払意思額や支払動機との関連を中心に文献研究を行った。同時に調査票設計・プレテストを実施した。2016年10月~11月を調査期間として本調査を実施した。調査結果をもとに、年間負担金よりも運賃による費用徴収が好まれていることやオプション価値を見いだす人が一定数存在することを明らかにした。また、運賃を引き上げたとしても需要量はそれほど減らないが、運賃を引き下げたときには需要量の増加が見込まれることがわかった。この成果を学術誌に投稿し、受理された。また、オプション価値を感じている方が年間負担金の支払意思額が高いが運賃には差がないことを学会報告した。成果の社会への還元として本調査の結果を住民の方に回覧板を通じて報告するとともに、当該地域の市役所交通政策課とも共有し、具体的な課題解決の資料として提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(1)については、2017年度前半に予定していた仮想データを用いたコミュニティ関係資産を可視化するプログラムの開発を行った。研究協力者から実データを収集するためのアプリ搭載用デバイスに不具合が生じたため、想定以上に時間を要した。このため、2017年1月からデータ収集を開始した。それに伴い、2016年度中にデータの解析、成果報告には至らなかった。しかし、現在は得られたデータの解析を行っており、成果を学会誌に投稿予定である。加えて2017年4月に現状把握と2017年度上半期に地域課題可視化システムの開発に取り組むための打ち合わせを同志社大学で行った。 課題(2)については、当初予定よりも早く本調査を実施できたため、データ解析や成果報告および学会報告を行うことができた。 課題(3)地域住民によるターゲットを絞った情報発信については、課題(1)から2016年度末にデータを得られたため、ターゲット選定がやや遅れている。早急にShiozu.et.al.(2015)と併せてターゲットとなる地点を特定化する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)については、2016年度中に得られたデータの解析を行っている。これに加えて過去の研究で得たデータを併せてパネルデータの構築も行っている。また、仮想データでの可視化プログラムは開発済みであるため、データ量のちがいに対応可能か等を中心に精緻化を進めていく。可視化プログラムの精緻化およびデバイスへの実装に関して、昨年度より多くの大学院生の協力を得られる見通しである。得られた成果については学会誌に投稿予定である。 課題(2)については、2016年度の学会報告を踏まえて、とりわけオプション価値に着目して論文にまとめ、学会誌に投稿予定である。また、動機との関係を検証し、学会報告・学術誌投稿を目指す。交通系など他分野の研究者とも交流し、広く知見を得る。 課題(3)について、ターゲットの選定を早急に行うとともに、研究協力者および当該自治体担当者にも協力をよびかけ、実情に応じた情報発信システムの開発を早急に行う。その上で、学内でのプレテストを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度中盤、実験用デバイスにアプリを搭載している最中に不具合が生じたため、不測の事態に備えて資金を残しておいたが、使用せずに済んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を国際学会で発表するため、講演申し込み中である。報告決定がなされた場合、旅費にあてることを予定している。また、複数のJournalへの投稿に向けて論文を作成している。これらの英文校正および校閲料として使用を計画している。またより多くの大学院生にアプリ搭載等を依頼する計画を立てているため、謝金支払いとする計画である。
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