研究課題/領域番号 |
16K03719
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
大森 達也 中京大学, 総合政策学部, 教授 (70309029)
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研究分担者 |
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
石田 和之 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 教授 (30318844)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然災害 / 出生率 / 都市と地方の人口分布 / 税制 |
研究実績の概要 |
初年度であり、当初の予定通り、研究分担者は各自の分担分野に関する調査・研究を遂行し、研究期間後半で理論の構築・分析を目標とする経済モデルの知見の蓄積を行うとともに、研究成果として一部をまとめた。 研究代表者の大森はこれまでのライフリスクの保障政策の分析に加えて、ナショナルリスクに対する保障政策を明示的に導入したモデルの構築を図った。研究分担者である内藤は災害が都市形成に及ぼす影響の分析を深めた。大森とともに、家計の自然災害に対する対策が出生率や都市と地方の人口分布に及ぼす影響を理論的に分析し、その成果は“Household's Disaster Prevention Activities, Agglomeration, and Economic Growth”として論文にまとめ、Regional Science, Policy and Practiceに掲載された。人口構造の高齢化が都市形成に及ぼす効果を分析した研究と安全保障政策と社会保障政策の政府予算の配分が社会に及ぼす影響について研究を学会にて報告した。 研究分担者の石田は大規模自然災害リスクに対する税制における制度的な対応を明らかにすることを目的にして調査した。さらに、固定資産税が空き家の増加などの要因となり、適正な土地利用を妨げ、災害発生時には避難の障害となりかねないなどの議論があることを踏まえて、固定資産税における家屋評価の仕組みについて、その趣旨や意義などを考察した。そして、これらの研究は国内の専門雑誌に2016年度中に3回にわたり掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要に示しているように、研究代表者と研究分担者は文献の精読だけでなく、調査研究も行い、すでに一部の研究成果は公表している。これらをもとに、さらなる課題テーマの研究テーマを深めていく。 研究代表者の大森と研究分担者の内藤が発表した"Household's Disaster Prevention Activities, Agglomeration, and Economic Growth"では、自然災害の発生確率の上昇は都市への集積を高め、出生率の低下が生じることを理論的に明らかにした。また、研究分担者の石田も現行の税制度が災害発生時の障害となることを明らかにしている。 2016年度、これまでの研究をもとに、研究代表者たちは人口構造の高齢化が都市形成に及ぼす理論モデルを構築し、国内外の学会で報告した。さらに、政府が安全保障政策と社会保障政策のどちらが社会厚生に大きく影響を及ぼしているかという研究についても国際学会で報告を行った。いくつかの研究論文については学会でのコメントをもとに現在改訂中である。 2017年度以降の課題研究遂行のための、経済モデルの知見の蓄積を行い、先行研究のサーベイについても行っており、本課題研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である本年度は、前年度に得られた研究成果をもとに、研究目的で述べた最終目的であるナショナルリスクとライフリスクの保障政策の両立した経済分析を行うための理論の構築を図り、これまでのそれぞれ独立した保障政策のもとでの既存研究の結果と本研究で得た結果を比較することにより、二つの保障政策が存在することによる政策の特徴を明らかにしていきたい。 そのために、研究代表者および研究分担者は研究テーマの分析を深め、経済学的・政策的なインプリケーションを導き出し、論文としてまとめていく。理論的な分析と実証分析の両側面から、これまでの単独の理論・政策として考えられてきたライフリスクとナショナルリスクの保障政策を融合的に理論構築を行い、二つのリスクに対する保障政策を両立して一つのモデル内で議論し、それぞれの空白部分に研究知見をさらに蓄積できるように取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者内藤が大学を異動し、新たな勤務先での校務等のために、研究活動の一部に支障が生じたためで、2016年度使用予定額が残り2017年度に繰り越されたためである。なお、内藤の研究活動の支障があった部分は大森が補完した。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の残額については内藤に分担し、内藤が国際学会での報告を行う予定であり、残額も使用する計画である。
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