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2020 年度 実施状況報告書

個票を用いた日本の中小企業税制分析

研究課題

研究課題/領域番号 16K03721
研究機関京都産業大学

研究代表者

八塩 裕之  京都産業大学, 経済学部, 教授 (30460661)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2022-03-31
キーワード中小法人オーナー / 節税 / 法人税 / 所得税
研究実績の概要

中小法人オーナーの節税に関する研究報告を日本証券経済研究所の証券税制研究会で行った(2019年6月)が、報告の際に参加者からいただいたコメントなどをもとにさらに研究を発展させて、論文を完成させた。論文は証券経済研究所編『企業課税をめぐる最近の展開』の第二章に収録され、刊行された(2020年6月。論文の表題は「税制が中小法人オーナーの節税行動に与える効果 ー法人企業統計個票を用いた分析ー」である)。
論文の概要は以下である。論文の目的は中小法人の個票データを用いて、その節税実態の一端を明らかにすることであった。日本ではかつて、所得税の税率が法人税よりも低く、オーナーが法人税負担を避けるために、企業活動で得た所得を法人に留保せずすべてオーナーが給与で受け取ってしまう結果、法人税を負担しない欠損法人が非常に多くなっている(いわゆる「欠損法人」問題)といわれた。しかしこうした状況は、近年法人税率が断続的に引き下げられて変化した。すなわち、2009年に中小法人向けの法人税軽減税率が引き下げられる一方、毎年の社会保険料率の引上げで所得税率(社会保険料を含む)は引き下げられた。その結果、近年では所得税率よりも法人税率のほうがむしろ低くなっているため、オーナーは企業活動で得た所得を給与で受け取るのではなく法人に留保したほうが、税負担を軽減できる。こうした近年の日本の制度変化が、オーナーの節税行動を実際に変化させたかどうかについて分析した。そのうえで、あるべき税制度の在り方について検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究終了年度は2019年度であったが、一年延長した。ただそこでコロナの問題が起こり、その影響もあって2020年度は想定したようには研究が進まなかった面もある。
2020年度は上述の通り、2019年度に研究会で報告したものを論文にまとめて刊行することができた。その点では研究成果を残すことができたが、研究論文として専門雑誌に投稿するところまでは至らなかった。コロナ禍の影響によって研究期間のもう一年の延長が認められたので、再度の延長手続きをとり、現在も研究を進めている。また、研究で使用する個票データ(法人企業統計年報)の目的外使用申請の延長手続きも財務省財務総合政策研究所に行い、認められた。

今後の研究の推進方策

2020年度に刊行した論文では、2009年度の法人税軽減税率の引下げがオーナーの節税行動に及ぼした影響について分析した。しかし日本では2013年度以降、今度は法人税の本則税率が引き下げられた。これにより法人実効税率は約5年間で7%(41%⇒34%)引き下げられ、再度節税行動にもインパクトを与えた可能性がある。
2021年度ではこの法人税本則税率引下げの効果も織り込んだうえで、2020年度に刊行した論文をさらに発展させる予定である。その途中経過(問題意識)は京都産業大学総合学術研究所所報で発表する予定である。そして結果を論文にまとめ、専門雑誌に投稿することを考えている。また、機会があれば研究会などで報告することを検討している。

次年度使用額が生じた理由

当初は2020年度のアメリカの全米税制学会に出席するための旅費として支出を予定していたが、コロナ禍により渡米できなかった。コロナの状況にもよるが、可能であれば2021年度の全米税制学会に参加するための旅費や学会参加費として使用し、研究の知見を得るとともに発表の機会も検討していきたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 税制が中小法人オーナーの節税行動に与えた影響 ー法人企業統計個票を用いた分析ー2020

    • 著者名/発表者名
      八塩裕之
    • 雑誌名

      企業課税をめぐる最近の展開

      巻: 第二章 ページ: 19,48

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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