研究課題
基盤研究(C)
日本では従来、オーナー経営の小規模法人が企業活動で稼いだ所得をすべてオーナーの給与でとってしまい、法人の所得留保をゼロにして法人税負担を避ける節税(「欠損法人問題」)が頻繁に行われている問題が言われてきた。しかし、近年、法人税率が大きく下げられ、オーナーの給与にかかる所得税率(社会保険料を含む)のほうがむしろ高い状態となった。いわゆる「欠損法人問題」の実態とともに、こうした近年の税制変化がオーナー経営の小規模法人の節税行動に影響を与えたのかどうかを個票データを用いて分析した。
租税論
欧米では小規模法人の経営者が企業活動で稼いだ所得を税率の低い課税ベースに移して節税を行う実態が、個票データで盛んに分析されてきた。しかし、日本では分析に使用できる適切な個票の入手が難しく、そうした節税の存在はエピソード的に語られるにとどまり、その実態がデータで分析されることはなかった。本研究で用いた法人企業統計調査は税務統計ではないものの日本で小規模法人の実態を示す数少ない個票であり、これを用いて小規模法人の節税実態の一端を明らかにすることを試みた。