研究課題/領域番号 |
16K03722
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
菅原 宏太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90367946)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 基準財政需要額 / 単位費用 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は次のとおりである。 1.菅原宏太「高齢化による基準財政需要額の変化-将来推計試算-」『地方分権に関する基本問題についての調査研究会報告書・専門分科会』(自治総合センター 平成28年3月)にて行った基準財政需要額に関する分析について,過去の『地方交付税制度解説』を収集し,単位費用および補正係数の経年的な変化について調査した。その結果,次の点が明らかとなった。第一に,項目別の段階補正(規模の経済性を考慮した単位費用)は,土木費や商工行政費といった経済理論的に想定されるものほど規模の経済性を考慮した単位費用設定がなされており,一方で社会福祉費は一定規模以上での均等単位費用が採用されている。第二に,土木費よりも教育費や商工行政費といった人的サービスの性格が強い項目において,より規模の経済性を考慮した単位費用設定となっている。第三に,1975年度から2015年度までの経年的な変化を追うと,どの経費についても単位費用の均等化(右下がり曲線のフラット化)が見られる。特に,単位費用の金額が大きい社会福祉費においては,小規模自治体での減額と大規模自治体での増額が著しい。 2.日本財政学会第73回大会において,研究発表「地方財政計画と地方交付税の近年の動向」(齋藤由里恵 椙山女学園大学)に対する討論を行った。討論資料の中で,自治体間における項目別の基準財政需要額の分布が国庫負担金・支出金の分布と強い相関を持つことを示し,基準財政需要額の分析においていわゆる「補助裏」を考慮する必要があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『地方交付税制度解説』の過去年度版の収集および各年度における単位費用と補正係数の積算の照会について当初計画していた以上に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,SBC 問題に関する動学ゲーム理論分析に中心的に取り組む。また,今年度の実態調査とデータの精査に基づいて実証分析の方向性を明らかにする。具体的には,次の点について調査・研究を行う。 (1) Sato(2002)を援用してTakahashi etal.(2008)のモデルに日本の地方財政制度を描写した補助方式を組み込むことで,中央政府から補助金が最も単純な定額補助形式である元のモデルと均衡の特徴などの相違を整理する。 (2) Takahashi etal.(2007)を参考にして,上の2 期間モデルから無限期間モデルへの拡張に取り組む。その中で,中央リーダーシップ手番のケースにおける動学的SBC 非効率が2 期間モデルと無限期間モデルでどのように異なるか,またTakahashi etal.(2007)の分析結果との相違を整理する。 (3) 歳出総額と地方交付税の予算-決算乖離の連関の検証。地方交付税の予算-決算乖離と地方財政計画の調整過程との連関の検証。SBC と道府県の戦略的行動の抽出。林(2006)に基づいて,SBC 効果と地方交付税が誘発する他の効果とを整理し識別方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
『地方交付税制度解説』の過去年度版の収集および各年度における単位費用と補正係数の積算の照会について当初計画していた以上に時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
官公庁への聞き取り調査(旅費),ワークショップ招聘研究者の増員(人件費・謝金)。
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