研究実績の概要 |
本研究は、不確実性の下での公共財供給の理論的研究を精緻化、最適供給ルールを導出、政策判断の基礎資料を提供を目的としている。本年度は、最終年度にあたり、応用モデルの精緻化とともに現実的なシナリオに基づいた数値シミュレーションを行い、公共財の最適供給に関する政策的知見を導出した。最終的な研究成果の一つとして、失業による不確実性があるもとで地方公共財の最適供給を実現する財政所得移転政策を明らかにした。そこでの望ましい所得移転政策は域内GDPを基準としたものであり、数値シミュレーションの結果も現実的に実行可能な水準であることが示された。この成果は、Tax competition, unemployment, and intergovernmental transfersとして論文にまとめ、国際学術誌であるInternational Tax and Public Financeに公刊された。また、関連する研究として国際的な政策競争環境下において財政を維持可能にする税率を理論的に導出し、日本を含む主要国における同税率を推定した。分析の結果、日本の法人税率はそれ単独では財政を維持可能にする限界の水準にあることが示された。他方で、他の財源を加えた場合は幾分か税率を下げるよりがあることも明らかになった。この結果は、Capital market integration and fiscal sustainabilityとして論文にまとめられ、国際学術誌European Economic Reviewに公刊された。その他、2つの研究成果を2篇の研究論文としてまとめディスカッションペーパとして公刊した。
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