局所ボラティリティ・モデルにおいて2項分岐木を用いたオプション価格の計算法の提案と確率ボラティリティの効果をともなった信用格付けモデルにおける金融商品の価格計算法について研究を行なった。前者については低次の漸近展開を基礎に二項木でオプション価格を計算する予定であったが、低次の展開では余り良い近似にならないことが判明した。そのことを検証するために多項式計算と高速フーリエ変換を組み合わせた新しい偏微分方程式の高次漸近展開の計算法によるオプション価格付け法を開発した。二項分岐木による計算が失敗したのは残念ではあるが、このアプローチにより高次漸近展開法によるオプション価格付けの簡便法が提案できたことは満足な成果であった。この方法ではジャンプが入った場合や早期行使権のある金融商品の価格付けにも成功している。執筆した論文は、既に数度の大幅な修正をこなした。掲載の決定はまだ出てはいないものの前向に希望が持てる状況になっている。 最終年度はもう一つの話題である確率ボラティリティモデルの効果をともなった格付けモデルについて研究も行なった。特に社債と社債オプションの価格を摂動論を用いて近似計算を行なった。当初の予定では速く動くボラティリティと遅く動くボラティリティ両方の効果を入れたモデルにおいて商品価格を計算する予定であった。しかし、計算をしてみるとかなり複雑な計算結果だったため速く動く項のみを用いた単純なモデルに作り変えてみた。一応、計算はほぼ完成させたが、単純なモデルでも利用するにはまだ計算手順が複雑であり余り実用的な価値がないと判断せざる得なかった。そこで、残念ではあるが確率ボラティリティの効果をともなった社債オプション価格の計算法に関する研究は一時停止せざる得ない状況に陥った。 全体を通して失敗してしまった研究も多かったが、それでも一定量の成果を出すことができたものと考えている。
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