研究課題/領域番号 |
16K03733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河合 正弘 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任教授 (30186051)
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研究分担者 |
西澤 利郎 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任教授 (70727768)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際金融 / アジアの金融発展 / 国際資本移動 / 金融市場の対外開放 / インフラ投資とPPP / アジア債券市場 / プロジェクトファイナンス / 政府開発援助 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、研究活動の中心をデータの定量的・定性的な分析ならびに分析結果の解釈に当て、研究代表者(河合正弘)および研究分担者(西澤利郎)のそれぞれが、論文を1本ずつ作成し、公表した。 研究代表者(河合正弘)は、アジア各国の金融市場の発展・国際統合の程度が時系列的にどのように変化してきたのかをまず検討した。その際、金融市場の発展については、量的な発展と質的な発展の両者に着目した。次いで、各国の金融市場の量的・質的な発展と国際金融統合度(国際資本移動の自由度)の間の相関関係を数量的に分析した。さらに、金融市場の国際的な統合度とマクロ経済パフォーマンスとの関係について、金融市場の質的な発展を考慮に入れた上で、数量的に分析した。その結果、金融市場の質的な発展が低いまま金融市場の国際的な統合(対外開放)を行うと、マクロ経済パフォーマンスが低下する可能性が高いという極めて興味深い結果を得た。この点について、論文としてまとめ、発表した(伊藤宏之・河合正弘「金融市場の量的・質的な発展:指標化とマクロ経済的な意義」『フィナンシャルレビュー』、2018年3月)。 研究分担者(西澤利郎)は、アジアの金融市場の発展や国際統合が各国の長期資本投資(とくにインフラ投資)にどのような影響を与えてきたかを検討した。とりわけ、アジアのインフラ投資における公的・民間資本、銀行資金・資本市場性資金の構成変化に着目し、PPP方式によるインフラ投資の意義と問題点について分析した。その成果は論文としてまとめ、発表した。(西沢利郎「アジアのインフラ投資ファイナンス」『フィナンシャルレビュー』、2018年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定されていたペースで研究が進んでいる部分と、当初の見込みよりも遅れている部分とがあり、総合的には概ね順調に進展していると判断される。 研究代表者(河合正弘)と研究分担者(西澤利郎)が、いずれも研究成果として論文をまとめ、公表できたことは当初予期していなかったことであり、この点、大きな進展がみられた。 しかし、当初予想されたペースで進まなかった部分もみられた。研究代表者(河合正弘)に関わる部分では、「国際金融のトリレンマ」の制約の下で、国際金融統合度(国際資本移動の自由度)、為替レートの安定度、金融政策の自由度の三者が同時に選択されるという仮説を十分検証することができず、これは次年度の課題として残された。 研究分担者(西澤利郎)に関わる部分では、インフラ投資の決定因に関する分析が不十分なまま残された。これは次年度の課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、当初予定されていた研究に加え、本年度に残された課題に取り組んでいく必要がある。 次年度(最終年度にあたる)において当初予定されていた研究活動としては、これまでの分析に基づき、アジアの金融資本市場の発展・国際統合、長期資本投資の拡大、及び安定的な為替レート制度の選択に関して政策的含意を得ること、それらの分析結果を学術論文にまとめて対外発表すること、である。また、アジアの金融資本市場のさらなる発展と国際統合、インフラ投資の増強、ならびに安定的な為替レート制度の実現に向けて、日本が果たすことが期待される役割についても考察し、研究成果を学術論文やより平易な政策ペーパーとしてもまとめる。とくに、日本の役割について示すことで、政策的な議論にも貢献することをめざす。 ただし、当初予想されたペースで進まなかった部分については、次年度も引き続き取り組むこととする。研究代表者(河合正弘)に関わる、「国際金融のトリレンマ」の制約の下で、国際金融統合度(国際資本移動の自由度)、為替レートの安定度、金融政策の自由度の三者が同時に選択されるという仮説の検証については、引き続き研究を続ける。また、研究分担者(西澤利郎)に関わる、インフラ投資の決定因に関する分析についても、引き続き検討する。 これら残された課題に取り組んだ上で、研究論文、政策論文を作成・発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた学会での参加が可能でなく、参加を次年度にしたため、次年度において当該助成金と翌年度として請求した助成金とを合わせて使用する予定。
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備考 |
研究内容や研究成果に関するwebページは次年度に作成の予定。
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