研究課題/領域番号 |
16K03737
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
奥田 英信 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00233461)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 企業金融 / 資本構成 / ドル化 / カンボジア / マイクロ金融機関 / 銀行 |
研究実績の概要 |
(1) カンボジア現地調査:2016年9月25日から10月1日まで、プノンペンとシェムリアップで現地調査を行い、カンボジアの中央銀行、金融機関、銀行協会、調査会社などで面談を行った。現地調査では、奥田英信・相場大樹「ドル化経済における企業の資金調達行動:カンボジア大規模アンケート調査による分析」(2015年度日本金融学会秋季大会報告論文、東北大学,2015年10月28日)の分析結果に基づいて、カンボジアの企業資金調達・投資行動・販売活動に関する当方の見解の確認を行うとともに、これまでの分析の不明点について先方と意見交換を行うことができた。一連の面談によって、次年度以降のデータ解析と計量分析にとって有効な情報を得ることができた。 (2) 暫定的な分析結果の発表:上記の(1)を踏まえて、カンボジア企業の資本構造と資金調達通貨の決定要因に関する計量分析を改めて行い、その結果を"Determinants of the Capital Structure of Cambodian Firms: Firms’ Fund Raising Behavior in highly Dollarized Emerging Markets"として、2016年11月5日にインドネシアのバンドンで開催された15th International Convention of the East Asian Economic Associationで報告し、学会参加者と意見交換を行った。また、マイクロ金融機関の融資活動について計量分析を行い、その結果を〝Management Characteristics of Cambodian Microfinance Institutions:Operational Efficiency and Management Objectives″として、2016年11月25日にプノンペンで開催されたThe 3rd Annual National Bank Of Cambodia Macroeconomic Conferenceで発表し、政策担当者を含む会議参加者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) カンボジア現地調査:当初の計画通り2016年9月25日から10月1日に掛けて実施した。現地調査では、カンボジアの中央銀行、金融機関、銀行協会、調査会社などで面談を行い、奥田英信・相場大樹「ドル化経済における企業の資金調達行動:カンボジア大規模アンケート調査による分析」(2015年度日本金融学会秋季大会報告論文)の暫定的な計量分析結果について意見交換を行った。現地調査によって、計量分析結果に関する疑問点を解消し、今後の分析の方向性について確認することができた。 (2) 暫定的な分析結果の発表:現地調査の結果を踏まえて計量分析の改訂作業を行い、当初の計画通り、その成果を2016年11月5日にバンドン(インドネシア)で開催されたThe 15th International Convention of the East Asian Economic Associationで報告した。研究の副産物としてマイクロ金融機関に関する論文を作成し、2016年11月25日にプノンペン(カンボジア)で開催されたThe 3rd Annual National Bank Of Cambodia Macroeconomic Conferenceで報告した。これらによって、研究者・政策担当者等と意見交換を行い今後の研究に有益な情報を得ることができた。 (3) データベースの拡充:NBC-JICA共同調査の第2回アンケートは、2016年度上半期に実施予定であったが、第1回のアンケートの経験を踏まえて大幅な改良が加えられたため、実施が2017年上半期に繰り延べられた。第2回アンケートの集計作業は平成29年中には概ね終了する予定であるため、本研究の最終年までには当初に予定した全作業が完了するのは確実と見込まれている。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、研究計画はほぼ順調に進捗しており、今後の研究は当初の計画に沿って以下のように進める予定である。 【平成29年度】 (1) カンボジア現地調査:平成28年度の計量分析結果について、企業、研究者、金融機関との意見交換を行い、企業の資金調達行動特に借入通貨選択問題について一層の理解を深める。(2) 企業の分析視角の改善: ドル化経済というカンボジアの企業金融環境を踏まえた、企業の資本構造と借入通貨選択を分析するための視角を改善する。(3) 分析結果の発表:上記の(1)と(2)の作業を通じて、計量分析を更に改善する。分析結果について学会などで報告し、研究者、実務家、政策担当者などの専門家と意見交換を行う。更に、研究成果を研究論文に纏め学会誌に投稿する。 【平成30年度】 (1) 東南アジア現地調査:カンボジアおよび東南アジアの研究機関・研究者への、研究結果の公開と意見交換(NBC等との研究発表会開催を含む)を行う。(2) 研究結果の公開: 投稿論文のフォローアップおよび、カンボジア企業金融の特徴と政策課題についての報告書を取り纏める。また、国内への研究成果の公開については、学術雑誌への投稿だけでなく、知識の社会への還元を進めるために図書の刊行を目指す。
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