研究課題
本研究では、昨今論議を高めている長期停滞の可能性を、グローバルなアングルから捉え、「国際資金余剰・世界金利・長期停滞」という研究テーマを設定し、多面的な角度から理論的・定量的に考察していく。さらにこのような考察を通じて、新たな政策対応が不可欠となることが明らかにされていく。研究期間を通じて以下の3点の研究成果を得ることができた。第1は、世界的資金余剰と長期停滞の関係を実証的に考察した。具体的には世界の貯蓄、投資、世界金利の関係をパネルVARモデルを用いて明らかにした。検証結果より、世界金利の低下傾向(すなわちグローバルな長期停滞)は、主に各国の投資低迷に起因していることが明らかにされた。本考察は内閣府の「経済分析」に掲載された。第2は、1980年代から現在に至る世界経済の潮流を定量的な分析も加味しつつ横断的に展望した。金融の自由化・国際化は、国際的な資金移動を加速させるとともに、各国の対外不均衡を常態化させる。そこで金融の自由化・国際化が本格的にスタートした1980年代以降の世界経済を、対外不均衡を視軸として多面的なアングルから考察している。2000年代の対外不均衡の拡大に伴う実体経済の活況は、現在長期停滞という形で調整局面を迎えている点も明らかにした。本考察は日本金融学会機関誌に招待論文として公表された。第3は、グローバルインバランスを1980年代以降詳細に展望し、今後のリスク要因について考察した。1980年の世界的な対外不均衡の拡大は先進国間(主に日米)での貿易摩擦という経済危機をもたらした。他方2000年代の対外不均衡の拡大は世界金融危機を招来した。こうした過去の経緯を踏まえると、現在の低成長下における不均衡の拡大は貿易摩擦と金融危機の双方のリスクを内包している点が明らかとなった。本考察は内閣府の主催する経済政策フォーラムで発表した。
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