研究課題/領域番号 |
16K03744
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
臼杵 政治 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90539058)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 確定拠出年金 / モンテカルロシミュレーション / マクロ経済スライド / 所得代替率 / ダイナミック戦略 / ライフサイクルファンド / 確率優位 / 効用関数 |
研究実績の概要 |
1.証券アナリストジャーナルでは、積立NISAやイデコを含めて家計(個人)の資産運用の際にしばしば用いられている、二つの運用手法(知恵)である定時積立方式(ドルコスト平均法)とライフサイクルファンドの長所・短所を検証した。どちらも機械的な積み立てであるため、市場環境に応じてダイナミックな配分変更ができない点だけでなく、リターンの分布がIIDで最終的な投資結果(積立資産額)のリスクとリターン(期待値)はリスク資産への配分量×期間で決定まるとすれば、他にも同様の効果が得られる運用戦略が存在する点で、絶対的に優れた戦略とは言えないとした。引退後の取崩段階では、ショックによる損失を避けるため、リスク資産を徐々に取り崩す戦略が、一度に取り崩す戦略よりもかえってリスクリターンの高い戦略になることを明らかにした。二つの運用手法は最適ではないが、機械的な運用ルールへのコミットするのでバイアスが投資家に与える影響を抑制する効果を持つ。 2.保険年金リスク学会の発表(プロシーディングス所載)ではリターンや積立比率が想定より低い場合に、リスク資産への配分を高めるダイナミック戦略の効果を検証した(標準的な厚生年金への上乗せを前提とした、移動ブロックブーとストラップ法によるシミュレーション)。老後準備額の確率分布をみるとダイナミックな資産配分戦略はライフサイクルファンドより下方リスクが増大するものの総体としてはより大きな準備を積み立ることができた。他方、最下方のリスクを軽減しつつ大きな運用益を獲得できる可能性がある点ではリスク資産への配分を固定的に増やす戦略の方がダイナミックな戦略より優れていた。すなわち、リスクの低い公的年金への上乗せとして、長期間にわたる積立を行う場合には積立状況の低下に応じて資産配分を変える戦略よりも、リスク資産への配分を高めて固定・維持する戦略が優れているとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年から体調不良となり、2018年に入院治療した。
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今後の研究の推進方策 |
1.本研究の目的は、運用資産のリターンを内生化した公的年金財政モデルを作成し、その上で公的年金に上乗せした私的年金(確定拠出年金)の資産配分が引退時点の老後準備にどのような影響を与えるかを検証することにある。現時点で、資産のリターンや賃金・物価上昇率を内生化した公的年金財政モデルはほぼ完成しており、今後は40年間の運用資産リターン及び物価・賃金上昇率のパスを生成し、このモデルに当てはめて実際にシミュレーションを実行し、ポートフォリオごとの老後準備及び私的準備の合計額を検証する。 2.シミュレーションにあたっては、・多変量正規分布を前提にしたパスに加えて経験分布や時系列相関(中心回帰性)を考慮したパスを用いる、・期待値を動かした場合の影響を検証する、・主要4資産に加えて不動産(世界REITインデクス)を加える効果(変化)を検証する、・ライフサイクルファンド、固定配分、ダイナミックな配分という3つの戦略を比較する、ことに留意して、それぞれの結果を学会などで報告し、適切な学術誌に発表していきたい。 3.さらに2019年夏までに新たな財政検証の結果が発表されることから、賃金物価上昇率の想定や給付のスライド調整率など、適切と思われる範囲でその数値を取り入れていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
体調不良(2018年6月に入院)があり、出張旅費を含めた研究費の支出が想定を下回った。
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