GK (2011)に代わってCW (2010)を拡張し、狭義の量的緩和政策について理論的に分析した。GK (2011)のみならずCW (2010)をベンチマークモデルとして分析を行うことで結果が頑健であることが示される。まず、CW (2010)のモデルにGK (2011)に従って中間投入財企業等を導入し、超過準備が自己資本の増強を通じて貸付を拡大させるメカニズムを持つモデルを導出した。厚生費用関数を効用関数の2次近似から得た後、モデルを最適質的緩和政策、最適量的緩和政策それぞれの下で解きマクロ経済変数の動学の特徴を確認した上で厚生費用を計算し、最適量的緩和政策の下でのマクロ経済変数のボラティリティと厚生費用が最適質的緩和政策の下でのそれらと変わりが無いことを示した。次いで最適量的緩和政策ルールと最適質的緩和政策ルールを合理的期待均衡を満たす範囲内で高性能PCおよび行列演算ソフトを用いてグリッドサーチで求め、得られた最適質的緩和政策ルール、最適量的緩和政策ルールそれぞれの政策がもたらす厚生費用を計算し、狭義の量的緩和政策は質的緩和政策と比較して効果が同等であること示した。 さらに、このモデルに量的緩和政策ルールを導入し、量的緩和政策の効果を検証すべく日本において狭義の量的緩和政策が導入されていた2001年~2006年のデータを用いて構造パラメータを高性能PCおよび行列演算ソフトを用いベイズ推定した。次いで得られた構造パラメータを所与に最適量的緩和政策ルール下でのマクロ経済変数のパスをシミュレーションで求めそこから推計される厚生費用と、実績値から推計される厚生費用を計算した。
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