研究課題
平成28年度は、コピュラを用いて株価と為替レートの関係を分析した。特に、米・英・ユーロ圏の株式に投資している投資家にとっての避難通貨(Safe haven currency)とヘッジ通貨(Hedge currency)の特定を行った。コピュラの手法を通じて、2変数がともに極端に大きな値をとる確率(Tail dependnece)を測定することができるが、これは避難通貨を特定する際に有用である。さらにコピュラは、2変数間の平均的な依存関係を相関係数以外の指標で表すことができるが、これはヘッジ通貨を特定する際に有用である。分析の結果、以下の点が明らかになった。第一に、英・ユーロ圏の株式市場では複数かつ同一のヘッジ通貨が使用されており、特にスイスフランが最も重要な役割を果たしていた。第二に、英国の株式市場には避難通貨が存在しなかったが、ユーロ圏の株式市場においてはいくつかの避難通貨が存在した。この違いが生じた要因としては、ユーロ圏の株式市場の方が英国の株式市場よりもボラティリティーが大きかったことが考えられる。第三に、米国の株式市場では日本円が避難通貨およびヘッジ通貨として共に有力な役割を果たしており、その傾向は2007年に発生したグローバル金融危機以降に見られるようになった。これは米・欧と比べ日本はグローバル金融危機の直接的な影響が比較的小さかったことによると考えられる。以上の研究結果を論文にまとめ、本学経済学研究科のディスカッションペーパーに登録した。また、学術雑誌にも投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は研究実施計画に沿って、株価と為替レートの関係をコピュラを用いて分析できたため。
平成29年度以降は研究実施計画に沿って、為替レートと金利の関係および株価・為替レート・金利の関係をコピュラを用いて分析していく予定である。また、平成28年度に行った株価と為替レートの関係に関する研究もさらに掘り下げていくつもりである。
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Discussion Paper New Series, School of Economics, Osaka Prefecture University
巻: No. 2017-1 ページ: 1-37