研究課題/領域番号 |
16K03751
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小暮 厚之 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (80178251)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モデル統合 |
研究実績の概要 |
本年度は,本研究の一年目として死亡率モデルの統合に関する基礎的な研究を行った. 特に,モデルの統合として2種類の統合を考えた. (1)APモデルとACモデルの統合 1つ目は,Age-PeriodモデルとAge-Cohortモデルの統合を行うことである.死亡率のモデリングにおいては,死亡率を年齢(Age),期間(Period),生年(Cohort)の3要因から考察することが多いが,これらの間には「Cohort=Period-Age」という依存関係がある.このため,死亡率を3要因に分解するいわゆるAPCモデルは本質的な識別性の問題を抱える.これに対して,本アプローチは,識別性の問題を持たないAge-PeriodモデルとAge-Cohortモデルを組み合わせることによって,3要因をすべて組み入れた新たな死亡率モデルを考察した.特に,モデル統合の加重となるAge-PeriodモデルとAge-Cohortモデルの周辺尤度の導出を行った. (2)多要因Lee-Carterモデルの統合 二つ目は,多要因Lee-Carterモデルの統合である.多要因Lee-Carterモデルとは,通常の単一要因のLee-Carterモデルを多要因に拡張したモデルであり,より詳細な死亡率変動の記述を可能とする.多要因Lee-Carterモデルを実際に利用する場合には,要因数を予め設定するという厄介な問題が生じる.また要因数によって推定や予測の結果が大きく変わるという問題も知られている.本アプローチでは,複数の多要因Lee-Carterモデルを統合することによって,要因数の決定問題を免れた多要因Lee-Carterモデルの統合を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的な展開に手間取り,十分なモデル構築を行えなかった.それに伴い,実際のデータを用いた計算に着手できなかった.さらに,当初予定していたリスク中立化の議論を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
一年目の研究で十分に行えなかったモデル構築を完成させ,我が国の人口・死亡率データを用いてモデル統合の推定を行う.推定は,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)によるシミュレーションを用いて行うため,計算を実行するための計算環境を整える. また,ベイジアンプライシングに必要なモデル統合に基づく予測分布のリスク中立化の議論を行う.このために,過去の申請者の研究Kogure and Kurachi (2011) において開発した最大エントロピー原理を適用する.この方法は,市場から得られるリスク中立条件を制約として,クロスエントロピーの意味で予測分布に最も近い分布をリスク中立分布とするものである.モデル統合による複雑さは増すものの,基本的には以前と同様にインプリメントできると期待している.単一変量リスクのリスク中立化から着手し,多変量リスクの中立化まで考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が十分に進捗せず,実際のデータを用いる計算に着手できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
データ分析を行うための計算環境を整えるために使用する予定である.
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