研究実績の概要 |
本研究の目的は,ファイナンス理論に基づいて企業のリスクマネジメントに関する学術研究の動向を体系的に整理するとともに,財務・市場データ等を用いたパネルデータセットを構築し,日本企業のリスクマネジメントに関する実態を実証的に考察することにある。この作業を通じて,ファイナンス理論と保険論との学術的融合を図ることが,プロジェクト全体の意義であり最も重要な点である。研究期間全体を通じて,以下の3つのカテゴリーにおいて成果を出すことができた。第一に,日本企業のデリバティブを活用したリスクヘッジ戦略に関する実証研究がファイナンス分野の海外学術誌(査読付)に掲載された("Bank Equity Ownership and Corporate Hedging: Evidence from Japan," Journal of Corporate Finance)。第二に,個別のリスクマネジメントを統合した概念である全社的リスクマネジメント(ERM)に関する実態調査について,企業のリスクマネジャーとの定期的な事例研究会を継続的に実施することを通じて,具体的な事例研究として結実させることができた(「三菱重工の保険リスクマネジメント改革について」『損害保険研究』)。これは,最終年度に実施した研究成果でもある。第三に,ファイナンス理論(企業金融)と保険論との橋渡しをするために,国内外の企業のリスクマネジメントに関する学術研究の動向について体系化(「企業リスクマネジメント理論の展開-企業の保険需要の理論に着目しつつ-」『保険研究』)を行うとともに,当該研究分野を網羅したリスクマネジメントに関する書籍『リスクマネジメント』(中央経済社)を出版した。
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