研究実績の概要 |
昨年度、モデル推定の困難さについて調査・整理した。今年度の初めは、その困難さがモデルが示唆するモーメントと実証データの標本モーメントが必ずしも整合的でないことが原因であることを確認した。そこで、モデルを分解し、モデルとデータが整合的になるレベルまでモデルを簡易化して、再度モデル推定を行った。具体的には、大きく3つのモデルを推定することにした。1つ目は、Constantinides and Duffie (1996)のモデルであり、すでに、Kubota, Tokunaga, and Wada (2008)で所得階級別10分位データでの分析結果があるので、今回の個票データによる分析結果との比較もあわせて行った。2つ目は、Constantinides and Ghosh (2011)であり、これは総消費データを使ったモデルということで、個票データに含まれる観察ノイズがパラメータ推定に影響しないというメリットがあり、主に次の3番目のモデル推定の初期値発見を兼ねる。3つ目は、Constantinides and Ghosh (2017)であり、当初、本研究が目指していたモデルの最終型である。実績として、1つ目の分析を夏に終え、秋には論文として完成させた。最終的に、「日本における家計の異質性を考慮したアセットプライシングモデルの実証研究」というタイトルで『武蔵大学論集』に掲載された(発刊は2020年3月)。論文では、消費者の異質性が、日本の株式市場に長年にわたり存在するバリュープレミアムを説明することを発見した。2つ目については2020年度前半、3つ目は2020年度中頃に論文にまとめる予定である。
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