研究課題/領域番号 |
16K03756
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸村 肇 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (90633769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際査読雑誌掲載 / 著名国際学会発表 / シミュレーション / 日本銀行勘定 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、科研費申請書で述べた課題(a)「日銀券需要と『量的・質的金融緩和』政策の財政費用」についての分析を優先的に行った。日本銀行の公開データを使った日本銀行勘定のシミュレーションを終えたうえで、米国National Bureau of Economic Researchとアジア開発銀行が平成28年8月に東京で共催したNBER Japan projectで研究成果を発表し、国内外の著名な経済学者と質疑応答を行った。また、国際査読雑誌であるJapan and the World Economyに”Fiscal cost to exit quantitative easing: the case of Japan”と題する藤木裕中央大学教授との共著論文を投稿し、改訂の上、掲載許可を得た。(掲載号・ページはVolume 42, June 2017, Pages 1-11。)
この論文では、現在の量的緩和が終了後、日本銀行が会計上の債務超過に陥る可能性が高いことを日本銀行の財務データのシミュレーションを通して示し、その対応策について提言を行った。
課題(b)の「資産取引決済と量的緩和政策のマクロ経済効果」については、Kiyotaki-Mooreモデルを拡張する形で一旦マクロモデルを構築したが、モデルを分析した結果、マクロモデルを構築する前に資産取引の決済に貨幣が必要な理由をきちんとモデル化して柔軟なモデルにした方が有用であるとの結論を得た。引き続きの作業については、科研費申請書にある通り、平成29年度に継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題(a)「日銀券需要と『量的・質的金融緩和』政策の財政費用」については、科研費申請書では平成30年度まででの国際学術雑誌への掲載を予定していたが、初年度に掲載を実現することができた。また、論文を発表したNBER Japan Projectは日米を代表する経済学者が多数出席するカンファレンスであり、当初期待していたよりも大きい研究のインパクトを残すことができた。
加えて、この論文は、平成29年3月17日配信のブルームバーグの記事(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMS5YD6K50ZF01)や平成29年4月8日配信の東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201704/CK2017040802000143.html)で紹介されるなど、社会へのフィードバックも当初の期待以上となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、課題(b)「資産取引決済と量的緩和政策のマクロ経済効果」については、資産取引の決済に貨幣が必要な理由のミクロ基礎づけをモデル化する。現在の見込みではこのモデルにより、銀行と投資信託がなぜ分かれているのか、なぜ貨幣が資産取引決済のつなぎの決済手段であることがもっとも効率的なのかについて理論的に明らかにできる予定である。その上で、このような貨幣の性質を踏まえて貨幣供給を増やすとどうなるかをモデル内で分析する予定である。こちらは平成29年度内の論文完成を目標としている。
また課題(c)の「税の支払い手段としての貨幣と永続的量的緩和政策の上限」の分析についても、平成29年度においては文献調査の上、基礎となるモデルの選定を行い、最終年度である平成30年度の完成を目標とする。
これらの点については科研費申請書にある予定に沿ったものとなっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での国際学会での発表を予定していたが、平成28年度については、論文を発表した国際学会の開催地が日本であったので、その分の経費が浮いたことが大きい。また、地方からの国内研究者の招聘セミナーの開催を見込んでいたが、在京の研究者の招聘が多くなったことにも一因がある。
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次年度使用額の使用計画 |
米国とドイツでの複数の国際学会への出席を予定している。また、当プロジェクトに関連した研究分野の国内外の研究者を招聘したセミナーを毎月一回程度を目途に開く予定なので、その費用の支弁に充てる予定である。
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