本研究では貨幣の供給経路である決済システムについてそのミクロ的構造を踏まえたうえで中央銀行が決済システムに果たしている役割についての分析を行い、その上で、中央銀行による量的緩和政策の影響についての含意を整理した。研究の内訳としては、日銀券需要と量的緩和の財政費用のシミュレーション分析に加え、銀行の信用創造における中央銀行券の必要性と「法貨」としての中央銀行券の性質に関する理論分析を行った。結果としては、量的緩和の出口のおいて最大一年あたり7兆円を超える財政費用が発生しうることと、理論的には量的緩和のように価値保蔵手段としての貨幣供給を行うのは実物経済に不効率な歪みを与えうるとの結果を得た。
|