研究課題/領域番号 |
16K03757
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80548305)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 資金再配分 |
研究実績の概要 |
本年度は、『法人企業統計季報』(財務省)の個票データ(四半期ベース)を用い、企業間の資金再配分について、母集団推計を行うとともに、追加分析を行った。母集団推計の結果、全体の資金再配分の動向に中小企業の動向がより強く反映されるようになったものの、(1)いかなる景気変動のもとでも、企業間の資金再配分が相当規模で生じていること、(2)credit destruction のボラティリティはcredit creation のそれよりも大きいこと、(3)日本企業の資金再配分は1990 年代に急激に低減していること、(4)日本企業の資金再配分(credit reallocation)の系列 は景気変動と順相関(procyclical)の関係にあること、(5)中小企業の資金再配分指標は景気変動と有意な相関をもたないこと、など、これまでの重要な結果は依然として維持されている。また、追加分析の結果、(1)企業間の資金再配分は、セクター(業種・地域・規模)間のbetween effectではなく、おもにセクター内のwithin effectによって生じており、資金再配分の大半は、個別企業レベルの資金調達行動の異質性を反映したものであること、(2)資金再配分の時系列変動もまた、セクターレベル(業種、地域、規模)のsectoral/ aggregate shockではなく、おもに企業レベルのidiosyncratic shockによって生じており、資金再配分の時系列変動のおもな源泉は、個々の企業レベルの固有ショックによるものであること、が新たに見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業間の資金再配分メカニズムに関する分析について、母集団推計、要因分析、効率性分析などが必要であるとの指摘を数多く受けたため、まずは本分析の精緻化を行っている。本年度は、母集団推計の作業に加え、要因分析として、(1)資金再配分をbetween effectとwithin effectに分解する作業、(2)資金再配分のボラティリティをaggregate/ sectoral shockとidiosyncratic shockに分散分解する作業を予定していたが、いずれの作業も順調に進捗し、一定の結果が見いだされているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、企業間の資金再配分メカニズムについて、分析を精緻化させていく。予定しているおもな分析は以下である。(1)海外の先行研究における資金再配分指標との比較を明確にするため、四半期ベースだけでなく年次ベースの資金再配分指標を算出する。(2)資金再配分の効率性を評価するため、企業レベルの生産性を推計したうえで、資金再配分と生産性の関係性について分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の支出に計上していたデータベース費用、学会や研究会への参加旅費等が、当初見込みを下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
データベース、図書、統計ソフトウェアなどの物品費、学会や研究会への参加および報告のための旅費として計上。
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