研究課題/領域番号 |
16K03757
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80548305)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金融論 / 金融機関 / 貸出市場 |
研究実績の概要 |
本年度は、企業間の資金再配分と生産性の関係性についてこれまで得られた結果を論文にまとめ、海外学術誌への投稿を行った。また、関連する研究として、戦前期の1888年から1936年までの府県別貸出金利データを用いて、戦前の日本における資本市場統合に関する分析を行った。本研究においては、Phillips and Sul (2007)のlog t regressionとclub convergence testの手法を用い、府県ごとの金利の収束検定および、異質的な経路を辿る収束クラスターの検出を行った。本分析において現状得られている主な結果は以下である。まず、1901年から1926年にかけて、全ての府県の貸出金利は同一の均衡に向かって収束しており、この時期に日本の資本市場統合が急速に進展したとする過去の先行研究の示唆と整合的な結果を得た。しかしながら、1927年以降、府県ごとの貸出金利は再び4つの異なる収束クラスターを伴いながら発散しており、この時期に再び日本の資本市場が分断化した可能性が示された。この要因については現在分析中であるが、1927年以降の4つの収束クラスターの形成要因として、府県ごとの銀行支店数の水準及び変化が非常に強い説明力を持っていることが示されている。このことは、1927年の銀行法による資本金規制の強化とそれに伴う銀行支店数の減少が、銀行支店網の毀損と銀行市場の寡占化を通じて、資本市場の再分断化を引き起こした可能性を示唆している。今後、本点について、府県間の支店を通じたネットワークに関する変数なども追加しながら、分析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた分析は順調に進捗しており、学会での報告や学術誌への投稿を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在学術誌に投稿中の論文については、レフェリーからの指摘を踏まえ、追加的な分析や論文の修正を行っていく。また、引き続き、学会やワークショップなどを通じて研究成果の発信を行っていく。また、現在分析中の論文については、分析結果が出次第、論文にまとめたうえで、学術誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた分析は順調に進捗しており、学会や国内学術誌等での公表は行っているが、これまでの分析結果の頑健性をさらに高めるための追加分析や関連するテーマについての追加分析を行う予定であり、加えて今後海外学術誌への投稿、研究成果の発信を実施する予定である。使用計画としては、追加分析のためのデータ購入費、学会・セミナー発表のための旅費、英文校正・投稿費等に支出する予定である。
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