研究課題
本年度は、後悔が証券市場均衡価格に与える影響を分析する。具体的には、以下二つの課題を取り組んだ。まず、それぞれの投資家が感じている後悔の影響をどのように集計するのか。次に、後悔が存在する場合、証券市場均衡価格がどうなるのか。これらの課題を解明するために、現代ファイナンス理論の礎とも言える資本資産価格モデル(CAPM)に、後悔回避を導入し、後悔を考慮した均衡価格モデル(RCAPM)を構築した。CAPMは投資家がリスク回避的であり、期待効用を最大化するという前提から出発し、投資家達の最適投資行動の下での市場均衡を記述する一期間モデルである。本研究は、CAPMの枠組みを維持しながらも、投資家達が金銭的な収益に対する効用のみならず、後悔も感じうるという異なれる前提条件から出発する。つまり、それぞれの投資家は、実際に投資したポートフォリオの収益率を、投資しなかった仮想的ポートフォリオ(countfactual portfolio)の収益率と比較し、後悔もしくはリジョイスを感じる。ベンチマークモデルでは、金銭的な収益への効用に関してリスク中立と仮定し、後悔に関しては、後悔回避と仮定する。上記の前提の下で、本研究はまず投資家の投資戦略を導く。さらに、証券市場の均衡を考察し、均衡価格評価式を導き出した。この評価式は、CAPMの市場ベータ(Market Beta)の代わりに、後悔ベータ(Regret Beta)を用いている。リスク資産の超過収益率がその後悔ベータに比例するという結果が得られた。これらの研究成果について、行動経済学会、大阪大学の研究会などで研究発表を行った。また、一部の研究結果をまとた論文は、行動経済学会のプリシーディングとして、学会誌『行動経済学』第10巻に掲載した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に取り組む予定の課題をおおむね解決できた。
研究計画に沿って、今までの研究で構築した理論モデルを用いて、証券市場のバブルなどの現象を分析する。
2018年3月4日から3月31日までに米国に出張しましたが、年度末のために、関連費用の執行は次年度にずれ込みました。
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Journal of Behavioral Economics and Finance
巻: 10 Special Issue ページ: 1-4