2018年度はソブリン・クレジット・リスクの要因を考察する実証分析を行い、その結果を研究会で報告した。推定に際しては、世界金融危機後の期間を対象に、米国の量的緩和(QE) 政策の変更に注目し、週次データを用いた。具体的には、ソブリンCDSスプレッド(5年)の変化率を被説明変数とし、国内要因として各国の株価指数と対米国ドル為替レートに関する変数、グローバル要因として米国株価指数、米国国債(5年物)利回り、VIXに関する変数を説明変数とした。期間は、2008年1月から2016年3月まであるが、QE1、QE2、QE3(テーパリング期間を含む)、QE終了後のそれぞれのサブサンプル期間についても推定を行った。さらに、先進国と新興国の違いにも焦点を当てるため、両者のサブサンプルも作成して分析した。なお、いずれもパネル・データを用いて、Fixed-Effects モデルとGMMモデル推定を行った。この結果、新興国では先進国とは異なり、米国のテーパリングを含むQE3の期間とQE終了後の期間にグローバル要因のソブリン・クレジット・リスクへの影響が大きくなったことが示された。 以上の結果を踏まえつつ、2018年度はさらに対外要因のソブリン・クレジット・リスクへの影響の大きさ自体と国内経済環境との関連についての分析を開始した。まず、対外要因がソブリン・クレジット・リスクに与える影響を表す変数として、自国のソブリンCDSスプレッドとグローバル変数の共変動の大きさを示すDCC(Dynamic Conditional Correction)を計算することとした。具体的には、各国のソブリンCDSスプレッドと米国株価指数S&P500、および、ソブリンCDSスプレッドとVIXの2種類のDCCを算出した。次に、DCCを被説明変数とし、各国政府の財政状況やマクロ経済変数を説明変数とする実証分析を開始した。
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