当初の研究計画では2018年度内に完了する予定であった、全国の市区町村ベースのデータを用いた開廃業の決定要因に関する分析に取り組んだ。この研究成果の一部は、「地域金融機関の再編が地域経済に与える影響-市区町村レベルの地域銀行の店舗データを用いた検証-」という課題で、2019年12月に経済産業研究所(RIETI)のディスカッションペーパー(19-J-070)として公刊した。この論文では、地域銀行の再編形態を合併のケースと金融持株会社設立のケースとに分け、再編が民営事業所の開廃業を含めた地域の経済指標に与える影響について検証した。そして、合併を経た地位銀行の店舗が存在する(した)市区町村では再編は地域経済にほとんど有意な影響を与えていないのに対して、金融持株会社に関連した再編を経た地位銀行の店舗が存在する(した)市区町村では多くの指標に対して有意な影響を与えていることを明らかにした。 この検証課題を拡張し、市区町村レベルでの地域金融の競争環境の変化が地域経済に与える影響についても分析を行った。ただ、民営事業所の開廃業に対して与える影響についての頑健性のある実証結果こそ2019度内に得られたものの、論文として完成させることができなかった。2020年度の早い段階で対応し、海外の査読付専門誌への投稿を終えたいと考えている。 なお、本研究課題の最終報告を兼ねた学外の研究者を交えた研究会を、年度末の3月上旬に立命館大学で実施することを予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究環境の急変により、中止することとした。
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