研究課題/領域番号 |
16K03761
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高屋 定美 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイナス金利政策 / 欧州中央銀行 / マクロプルーデンス / 財政政策 |
研究実績の概要 |
当年度では、欧州中央銀行の非標準的金融政策の効果に関する実証研究の実施と、マクロプルーデンス政策の理論的な整理、そして欧州の財政政策と金融政策とのポリシーミックスに関する研究を行った。最初の研究に関して、量的緩和政策の効果に関しては、すでに実施しているため、欧州中央銀行のマイナス金利政策に焦点を当てて、マイナス金利政策が与えた金融市場への影響ならびに実体経済への影響を時系列モデルを用いて、実証している。その結果、マイナス金利政策は資産価格を引き上げることには効果があり、生産には幾分かのプラスの効果、インフレ率には効果がないという結果を得た。これを「マイナス金利政策の経験-ユーロ圏と欧州小国の経験から学ぶ-」(ゆうちょ資産研究 第24巻)として公刊した。 また2番目のマクロプルーデンス政策の理論的な整理に関しては、公刊はしていないが、バーゼル規制等を中心にミクロプルーデンス政策のシステミックリスク予防への効果などを中心にまとめている。 3番目の財政政策と金融政策とのポリシーミックスに関しては、非標準的金融緩和を前提に、緊縮財政政策がユーロ圏加盟各国に与える影響を検証している。その研究の一環として「EU財政ガバナンスの問題と新たな展開」(嶋田・高屋・棚池編著『危機の中のEU経済統合』所収)を公刊している。 これらの研究により、欧州中央銀行のマクロプルーデンス政策と金融政策の総合的な効果を検証することが可能となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進捗している。研究実績の概要に書いたように、3つの視点から欧州中央銀行のマクロプルーデンスと金融政策の効果を検討しており、総合的な検証ができるものと考える。また、最終年度に向けた準備も概ねできていることから、研究計画の変更はないものと考える。また海外での国際学会での報告を申し込み、それのアクセプトも完了している。 マクロプルーデンスに関しては、国際決済銀行から出版されている関連レポートや専門論文の理解を進め、整理している。それにより、システミックリスクにさらされている欧州金融市場では、欧州中央銀行によるマクロプルーデンス政策は必要であることが確認されている。ただ、理論的に金融政策の出口を向かう途上で、金融機関の危機が発生すると、マクロプルーデンスと対立する可能性もある。その理論構築も進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方であるが、現時点での研究成果を学会で公表する予定である。具体的には、2018年6月のThe European Union Studies Association Asia Pacific (EUSA AP) に応募しアクセプトされている。また10月開催の信用理論研究学会でも関連研究を報告する予定である。 また、ミクロ面を補強した実証研究を行う予定である。具体的にはBureau van Dijkから提供されたBankScopeデータベースを用いて、ユーロ危機後の金融機関の財務状況を把握し、各金融機関に欧州中央銀行の金融緩和の影響と、各金融機関の財務指標の連動性を検証する予定である。 さらにマクロプルーデンスと出口に向かう金融政策の対立が発生する事象を検討し、その対立を回避するための方策を理論的に検討し、提言する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度での国際学会への出張が決まり、またその学会での報告論文と、国際学術雑誌への投稿のために英文校閲が必要となり、その英文校閲費が発生する可能性があるために次年度使用額が発生した。 そのため次年度には、次のような使用を計画する。まず台北での 2018 EUSA AP Annual Conference への出張(110千円)と、フランクフルトでの欧州中央銀行への出張(350千円)を計画している。また実証研究を行うために、欧州銀行業の財務データを利用するために、そのデータベースの購入(BvD Bankscope:350千円)を計画している。また英文校閲を計画している(250千円)。
|