研究課題/領域番号 |
16K03763
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 喜美子 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (70351434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金融統合 / 金融深化 / スピルオーバー分析 / 株式市場 / 資本流入 / 閾値分析 |
研究実績の概要 |
アフリカにおける金融の発展と金融の統合が経済成長に貢献しているかを、金融統合と経済成長が非線形関係にある(国内金融の深化に関して閾値を設定)と仮定し、Masten, Coricelli and Masten(2008)やKose, Prasad and Taylor(2011)を参考に、GMMの手法でパネル動学分析を行った。その結果、金融市場や制度が十分に成熟していないアフリカ諸国の多くにおいて、グローバルな金融統合が経済成長に貢献していないといえることが分かった。 アフリカの主要株式市場が、グローバルおよび地域からどの程度の影響をうけているのか、Diebold and Yilmaz(2012)のスピルオーバー手法を用いて分析した。アフリカ株式市場の地域統合は高まりつつあるものの、現段階ではまだ低いと言わざるをえず、グローバルなリスクを最小限に抑えるためにも、一時的な資本規制が必要だと結論づけた。これは、IMFが提言し始めた資本規制の必要性という動きと一貫性があるといえよう。 さらには、同様の手法を用いて、世界金融危機以降に先進国が実施した量的金融緩和策が、アジア地域の株式市場に影響を与えていることを明らかにした。そこで、先進国の金融政策がアフリカ市場にどう影響を与えるのかに関しても現在検討している。 サブサハラ・アフリカにおけるグローバリゼーションの経緯を、歴史的な長期データを用いてサーベイし、アフリカにおける金融部門の発展が、貿易と比べていかに直近の動きに過ぎないのかという点を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、アフリカにおける金融部門の発展と、金融のグローバル化および地域金融統合の促進が、経済成長の促進にどう貢献しうるのか、以下の4 点から検討することを目標としている。①アフリカの金融発展の現状を、株式・債券市場と銀行部門における深度/アクセス/効率性の側面から分類し、各国の経済発展段階や経済構造との関連性を明確にする。②対外資本取引の自由化を通して、アフリカ各国の金融市場がグローバル化しているのかを、グローバル/地域からの影響の程度とその要因を推計により導出することで検証する。③国内金融の深化が経済成長に貢献するか、金融市場の国外開放が経済成長に貢献するか、地域金融統合は対外ショックの緩和に貢献するか、金融発展と金融統合の両側面から分析する。④アフリカ各国にとって、経済成長に貢献しうる金融部門の役割とは何かを、為替制度の選択も含めて総括する。金融のグローバル化がもたらす利益を享受しながら、その脆弱性を補うため、国内金融の発展を促進させると同時に、地域金融統合を強化するという政策的提言を行う。 このうち、①は、『現代アフリカ経済論』(第7章「アフリカにおける金融の役割」の執筆担当)を、アフリカ開発銀行より助成されて翻訳化される際に、追記とデータの修正という形で総括した。この翻訳書は、第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ in Kenya, 2016年8月27-28日)にて配布された。現在、より細かいデータで再検討を始めている。②は論文を作成し、著書の1章として発刊された。③は論文を作成し、発表し、現在投稿準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アフリカにおける金融市場の発展と金融機関の振興に関してSahay(2015)が示す新しい基準(深度/アクセス/効率性)をもとに、アフリカ各国における金融部門の発展度合いを再整理・分類する。そのうえで、各分類が、アフリカ各国経済の発展段階と因果性があるか検証する。さらに、対外資金の流入が製造業部門を中心とする生産性を弱めてしまう、金融資源の罠のような現象が、アフリカでも起こりつつあるのか、併せて確認する。 アフリカの主要株式市場が、グローバル、よりくわしく言えば先進国の量的金融緩和策や正常化からどのような影響をうけているのか、Diebold and Yilmaz(2012)のスピルオーバー手法を用いて分析する。さらには、アフリカ各国のマクロ経済変数や制度の質によって、資本流入の動きが変わるのか(グローバルな投資家の意思決定が影響されるのか)をパネル分析で検証し、資本流入の実態を把握する。 アフリカにおける金融の役割を、為替制度の選択・金融政策の実施・資本規制・地域統合の促進という4つの問題をふまえて総括することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月末にドイツ・ベルリンにて開催されたThe 83rd International Atlantic Economic Conferenceに参加・発表した経費(306,590円:すでに申請済みで次年度分に繰越し)が、当該年度の実支出額に含まれていないため、未使用額が多く示されている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は論文の英文校正と投稿を増やす予定であること、長期データの収集のためにも旅費を使用したいと準備しているため、十分に使用可能と考えている。
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